運用型広告のセカンドオピニオンを実施する際に見ている7つのポイント

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広告運用の仕事をしていると自然とセカンドオピニオンとして、第三者が現在運用中の広告アカウントやレポートに触れる機会があります。

要するに「うちの広告運用大丈夫なの?」的なニュアンスで相談を受け、人の仕事に口を挟むという、例のアレです。

自分自身、何度かこれまで自分以外が運用する広告アカウントを目にしてきましたが「え…これ…」みたいなケースから「これもう、ほとんどツッコミどころがないな」というものまで、幅広く色々な広告アカウントに触れてきました。

本日は自分が実際にセカンドオピニオンとして、運用型広告のアカウントに触れる際に見ているポイントについて、お伝えできればと思います。

また、セカンドオピニオンとして入る場合、大きく分けて下記2つのパターンがあるかと思います。

  • 依頼者(決裁権者、担当者)が運用している
  • 第三者(社外、社内)が運用している

今回は「第三者(社外、社内)が運用している」ケースを前提に、解説していければと思います。

運用型広告のセカンドオピニオンをする際に見ている7つのポイント

全部で7つあります。

1.設定が悪いのか、広告が悪いのか?

目標値の設定がイマイチだったり、そもそもビジネスとして成立していない場合は例外として、ちょっと偏見を含む意見かもしれませんが、運用型広告のパフォーマンスが振るっていない時って原因は究極的にこの二択しかないんじゃないでしょうか。

  • 設定がよくない
  • 広告がよくない

「設定がよくない」というのは根本的に設定方法を勘違いしていて、思った通りの広告配信ができていないパターンです。

例えば特定の配信面にだけ広告配信したいのに設定できていなくて、あらゆる広告配信面に広告が露出していたり、特定の年齢層の方に広く広告を見てほしいのに、逆にその層を除外してしまっていたりするような設定だったりを意図せず実施し、成果が出せていないといったパターンです。

もう1つの「広告がよくない」は、広告文そのものに難があり、広告の目的(認知、獲得など)が実現できていないというパターンです。

特にGoogle 広告、Meta 広告などでは近年「設定がよくない」ケースでも成果が出る場合も多いのですが、結局のところエンドユーザーが直接触れる広告そのものがよくないと、広告が目的を実現できない、機能しない可能性が考えられます。

少し話が脱線しますが、自分は、広告はコミュニケーションだと考えています。

例えば下記条件に照らし合わせてみてパッとしない広告は、本来のポテンシャルを発揮できず、うまくコミュニケーションできていないケースも多いんじゃないでしょうか。

(1)何を伝えたいかが明確か
(2)広告制作者がこだわり、思い込みを捨てて広告を制作できているか
(3)客観的事実をベースに書かれているか
(4)可能な限り数値を用いて具体化されているか
(5)ユーザーが知りたいことを考え抜かれた結果か
(6)他社の広告文に影響されすぎないか
(7)あらゆる表示パターンを想定し作られた広告か

【決定版】リスティング広告の広告文の作り方』より引用

広告の向こう側には生身の人間がいるということが、しっかりと前提として理解されているかという点について注目してあげると、数値上の課題が見えてくるのではないでしょうか。

2.成果よりも姿勢

成果に納得がいかないのでアカウントを見てほしい

そう相談を受けて広告アカウントを見て話を聞いていくと、実は広告運用そのものというよりも、広告運用者のコミュニケーションの取り方や姿勢に難があるというケースも珍しくありません。

以下のようなコミュニケーションをとっている広告運用者の場合、リテラシーが高くなくても、運用型広告に対して発注者(決裁権者)が造詣が深くなくとも仕事に違和感を感じますし、「この人にお金を払うべきか」「この人の所属する組織とお付き合いすべきか」など判断をされてしまいがちです。

  • 重要事項について説明しない
  • 対応がそっけない
  • 自発的な提案がない
  • 返信や連絡が遅い
  • 対応が遅い
  • レポートがツールによって自動生成されたテンプレ頼み
  • 新規提案が案件の性質を考慮したものではない(テンプレ感が強い)

前述した通り、「成果に納得がいかないのでアカウントを見てほしい」と言われてアカウントを見ても、実際には広告運用者のコミュニケーションの取り方や姿勢に難を感じているというケースは往々に存在します。

例えば「対応が遅い」に関しても、そもそも納期を請け負った時点で合意しておけばいいだけですし、「返信や連絡が遅い」に関しても、最悪一次回答さえできていれば印象はまったく異なります。

特に発注者(決裁権者)のリテラシーが高くない場合、3営業日程度かかるような作業も「1時間あればできるでしょ」などと脳内で解釈されてしまっているケースも珍しくありません。

納期については事前に説明し、納得が取れないような空気感であれば時間をかけてでも理由を説明すべきです。

そういったものをショートカットしようとすると、余計に捻れてしまうのが常です。

1.設定が悪いのか、広告が悪いのか?」にて、自分は「広告はコミュニケーション」と述べましたが、広告主-広告運用者間のコミュニケーションの齟齬が発生していないかといった点も、必ず見るようにしています。

参照:広告運用者が習得すべきコミュニケーションスキル

3.広告運用者が数値に関し誤解を招く説明をしていないか

数値や各指標の概念などに関し誤解を招く説明は避けるべきです。

成果を重視したり、相手に負担をかけないように「嘘も方便」と自分自身に言い聞かせ、嘘を織り交ぜて語ってしまうのは愚行です。

例えば下記のような会話をし、施策、日々の広告運用を実施している場合などは注意してみるようにしています。

  • 広告ランクは「品質スコア×入札単価」によって算出されるため、品質スコアを KPI として広告運用を実施
  • クリックは発生しているがコンバージョン率が低く、そのためLPにのみ課題があるのでLPOのみ実施が必要

これらの説明だったりを悪意なく、あるいは悪意を持ってしているに関わらず、話し方や説明の態度から運用者の広告運用に対する造詣の浅さや知識の不足を把握することができます。こういった説明をしているケースにおいては、特に決済権者側はもちろん、広告運用者自身すら気付いていない重大な問題がアカウント内に起きているケースが珍しくないため、特に注視してみるようにしています。

4.運用上の利便性を追求し機会損失を招いていないか

一時期はよくあったのですが、広告予算的に明らかにありえない判断なのですが、管理画面の仕様上の観点からなのか、特定の媒体だけに広告運用を絞って配信を行うケースが散見されました。

また管理画面を最後に触れたのが半年前…といったケースも存在します。以下のような点に注目することで、それらは確認することができます。

  • 媒体選定によって機会損失が生じていないか
  • 管理画面上で履歴を確認し、どのような広告運用がされていたか
  • Meta 広告ライブラリなどを確認し最後に広告追加、変更が行われたのがいつか、どの程度の周期で変更が行われているか

この点のリスク、危険性については下記別記事でも言及していますので、そちらをご参照ください。

参照:BtoB案件の広告運用を行う際にこっそり取り組んでいる7つのこと

5.依頼者が運用型広告について誤解していないか

そもそも依頼者が運用型広告では解決できない悩みを抱えており、それを運用型広告で解決しようとしている」というケースも珍しくありません。

例えば BtoB においてリスティング広告のみ広告配信しているケースにおいて「もっと成約率を上げたい」という悩みを解消するには「広告の運用者を変更する」よりも「営業体制を見直す」といった取り組みを展開した方が良いケースも往々に存在します。

また他にも例えば「一部上場企業の採用担当責任者向けに特化した商材で、年間広告経由で1万件以上の資料請求を獲得したい」という目標設定をされ広告配信をしたとしても、目標がそもそも不可能なもののため達成することは困難ですし、そもそも余程の特筆すべき技術や資本力、癒着がなければそれは新規ビジネスの場合、機能しない可能性すらあるように思います。

運用型広告は魔法ではないため、そもそも目標が適正か、その集客や事業成長を実現する上で課題となっている悩みに対して運用型広告は有効なソリューションなのかという点についても確認するようにしています。

実際にコンバージョン後のユーザーの動きなども追いつつ広告配信している場合だと、上記のようなケースでは「広告の運用者を変更する」「運用のやり方に口を挟む」ことによって得られる成果は大抵の場合は軽微、もしくは運用者の本来の能力が発揮できなくなるため、マイナスに作用する可能性もあります。

6.依頼者が運用者とコミュニケーションすることから逃げていないか

前述「2.成果よりも姿勢」で述べたパターンとは逆に、依頼者(決裁権者)が広告運用者とのコミュニケーションを面倒に感じ、結果うまくやり取りができていないケースも存在します。

例えば下記のようなケースの場合、広告運用者が本来の実力を発揮するのは困難を極めます。

  • 成果や目標が不明確、不安定(合意ができない)
  • 「獲得数が伸びたら広告費を伸ばす」などと運用者を突き放している
  • メールや電話、Slackなどで連絡が取れない
  • パートナーではなく外注先と捉えている
  • 中長期的なビジョンを説明していない

上記のような姿勢が発注者側に見られる場合、例えば運用担当者を変更したりしても結局成果が改善される可能性は低いです。

上記のような姿勢を否定するわけではないのですが、常に上記のような姿勢の発注者から仕事を請け負って成果が出せる運用者はそもそも希少な存在で仕事が選び放題です。そのため、そもそもそういった発注者と一緒に仕事をする可能性はかなり低いはずです。

また広告運用を持続しているとある時、発注者と運用者が協力しなければ超えられないような壁が突然現れるのですが、そのような運用体制では、そういった壁を乗り越えられない可能性が高いです。

弊社の場合、そもそも上記のようなケースだと広告運用の仕事をお断りしてしまうケースも珍しくありません。

例えば自分自身、若手の頃にそういったクライアントワークを通じて実際に半年ぐらいで広告費を20倍ぐらいにまで増やしたことがあるのですが、今振り返ってみると若手だった当時は楽しかったものの、「今やりたいか?」と言われると、結構微妙です。

結局上記したような「壁」を乗り越えられないケースが多いので、そういった場合だと継続的な仕事にはつながりにくいからです。

もし、依頼者が上記のような姿勢で広告運用を発注したい、依頼したい場合はアフィリエイトを活用するなど、そもそも集客方法の見直しを実施すべきでしょう。

7.目先の成果が良ければそれでいいのか?

これもコミュニケーションの不和が引き金になっているケースが多いのですが、例えば短期的な目標を追求するあまり目先の取り組みばかりに目がいき、具体的にどう事業を持続させるか(中長期で安定的な集客を実現するか)が不明確になってしまっているケースは珍しくありません。

ブランド棄損や戦略レベルの取り組みが戦術とそもそもリンクしている、またリンクすることによって中長期的に不利なことになっていないかという点も確認すべきポイントです。

運用型広告を獲得目的で利用する場合、運用型広告は1つの集客ツールでしかありません。

集客した結果どうなりたいのか、それを集客を積み上げて何を実現したいのかという事を広告運用者が把握できているか否かというのは、短期的な成果には影響が出にくいものの、中長期的に見ていくにあたっては、とても重要なポイントとなってきます。

自分はその点について、以前にも下記のようなツイートをしたのですが、短期視点(1Qなど)でこれらを勘案することは困難ですが、中長期的に見据えて取り組んでいくことにより、後々になってから一段上のステージに立てるようになることも珍しくないため、そもそも目先の成果以外のものを広告運用者が見れているのかどうかという点も確認するようにしています。

逆に広告運用者の発言を確認し、下記のような兆候が見られる場合は要注意です。

  • 商材の特性や性質を理解していない
  • 市場に対する理解が浅い
  • ブランドに対する理解がない
  • 中長期的視点で広告運用ができていない

またそもそも発注者側が「集客した結果どうなりたいのか、それを集客を積み上げて何を実現したいのか」について、広告運用者に説明したり、両者で合意(または確認)が取れているかどうかといった点も非常に重要なポイントなので、確認するようにしています。発注者側がここを実現できていない場合「6.依頼者が運用者とコミュニケーションすることから逃げていないか」にも該当するような形になります。

最後に

セカンドオピニオンは、むしろオピニオンを依頼する側にも、課題や問題があるケースも珍しくありません。

オピニオンする当事者は教師や医師のように判断結果を第三者目線で淡々と述べる役割以外にも、鏡のようになって「自分自身に課題はないといいますがそれは本当でしょうか」と見せる役割も、場合によっては担わなくてはなりません。

また今回本記事で取り上げた「運用型広告のセカンドオピニオンをする際に見ている7つのポイント」は、セカンドオピニオンする側はもちろん、発注者側の立場の方が、自分自身の振る舞いや、広告運用を依頼している広告運用者、社内のマーケティング部署の方とのコミュニケーションに課題はないかといった点を洗い出す際にもご活用いただけるものかと思います。

そのような形で、この記事がぜひ一助となれば幸いです。

また自分がこれまで見てきたアカウント診断の詳細な体験については下記記事でも詳しく言及しているので、もし興味がある方はそちらもご一読ください。

参照:Web広告相談クリニックを1年間やってみて思った3つのこと

文責:川手遼一