リスティング広告に潜むアドフラウドの危険事例

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運用型広告の中でも「リスティング広告(検索広告)」といえば、検索ボリュームが一定を保ち続ける以上は原則、あらゆる商材に対応し「盤石に集客し続けることができる広告媒体」というイメージを持っている人も珍しくないかもしれません。

他ディスプレイ広告に比べてクリエイティブ上での表現の幅がテキスト主体という制約条件がある一方、その制約条件内で一度しっかりとしたものを作り込み、LPO や EFO を行いながら広告費をしっかりと支払い続ければ、比較的自然検索流入などに比べて安定的に露出・流入を確保でき、トレンドや競合状況などによって当然左右される点はありつつも、集客を持続的に実現することができる、夢のような広告媒体です。

参照:【決定版】リスティング広告の広告文の作り方

その性質上、検索語句の内容、特定のキーワードやそのマッチタイプによる検索語句(検索クエリー)の広がり方に注視する方が多い一方、「アドフラウド(不正広告)」というと画像や動画などを用いた広告で起きているイメージを抱えている人も多く、媒体側でも当然対策を講じている一方、「検索広告ではあまりアドフラウドの問題によって、広告主側に不利益が生じることはない発生していないだろう」と思っている方も珍しくないかもしれません。

参照:無効なクリック: 定義 – Google 広告 ヘルプ

本日はその、夢のような媒体である検索広告で起きたアドフラウド事例(広くは昔からある不正クリックに依拠するもの)についてご紹介します。

1.そもそもアドフラウドとは?

アドフラウドとは、一般的には Web 広告上の仕組みを利用した詐欺、搾取行為を示す行為の総称です。

いわゆる「隠し広告」や「自動リロード」など、エンドユーザーを不快にさせつつ広告主も被害を被るものもあれば、オークションシステムや媒体側の AI の仕組みを逆手にとって広告主から一方的に広告費を搾取するタイプのものまで、幅広く存在しており、それらの総称をアドフラウドといいます。

より上位の概念として「アドベリフィケーション」というものも存在し、それらの中にはアドフラウド以外にも「ビューアビリティ(視認可能性)」や「ブランドセーフティ(ブランド毀損防止)」などが内包されるケースもあります。

今回のケースでは広告主が、一方的に搾取されるケースについてご紹介します。

2.検索広告におけるアドフラウド事例

今回の事例ですが結論、オークションシステムや媒体側の AI の仕組みを逆手にとって、広告主から一方的に広告費を掠め取るタイプのアドフラウド事例になります。

3.発覚の経緯

経緯として、XでDMにてタレコミがあり、話だけを聞き不審に感じ「管理画面のここを見てください」と指摘し自体が発覚…というものになります。

DM にて本人からは「あとは煮るなり焼くなり(原文ママ)」と頂いたため、事例としてブログでご紹介します。

4.具体事例

経緯としては下記のとおりです。

  1. Google 広告運用中に検索語句を確認したところ不審な検索語句を発見(類似の検索語句にて流入し電話タップでコンバージョンが発生するケースが散見)
  2. 電話について確認するも実際は発生しておらず「AI ですかね?」と川手にタレコミが入る
  3. 気になって「キャンペーン画面で[分類]をクリックし[ネットワーク(検索パートナーを含む)]を確認してください」とタレコミ元へ指摘
  4. 軒並み「検索パートナー」からの流入で起きていたことが発覚
  5. 広告費も「検索パートナー」に相当寄っていたため、検索パートナー枠への配信を停止(タレコミ元の方が対応)

5.対策

上記「4.具体事例」にもある通り、「検索パートナー」への配信を停止したとのことです。

6.なぜそのようなことが起きるのか

そもそも検索パートナーとは、Google のサービスを含む Google 以外の検索エンジン上で検索を行った際に広告が表示されるよう、パートナー契約を取り付けている検索機能を有しているサービスのことを示します。

Google と提携することで検索結果に広告や無料商品リスティングを掲載することができるようになるため、Google 広告を出稿するだけで広告主は Google 以外の多数のウェブサイトに Google 検索広告とリスティング広告のリーチを広げることができる仕組みとなっています。

参照:検索パートナー – Google 広告 ヘルプ

一方、検索パートナー経由でリスティング広告をクリックすることで、検索パートナーに対して収益が発生する仕組みのため、このような形で意図してCVを発生させることで Google の AIに対して「ものすごく良い広告媒体なのでは?」と誤認させ、意図して広告費を掠め取ることが可能だったりするのです。

もちろんすべての検索パートナーでこのようなことが横行しているわけではありませんが、今回は一例としてそういった不正な、また検索パートナーを特定するほか、検索パートナーごとの詳細な数値を確認することは難しく、そのため今回は「検索パートナーへの広告配信は停止」という手を打たざるを得なかったようです。

7.放置するリスク

今回のようなケースを放置することで、下記リスクが生じます。

  • 獲得効率の悪化
  • 広告費の高騰
  • 誤ったデータの混入
  • 質の悪い流入の発生(リストの濁りなどにつながる)

8.なぜアドフラウドの問題の話が広がりにくいのか

これは私見ですが、「アドフラウドの問題の話が広がりにくい」と感じているのですが、仮説として下記理由が挙げられるように思います。

  1. そもそも獲得単価やROAS(獲得効率)、LTV 以外に興味がない人が多い
  2. 日々の成果向上で精一杯
  3. 工数をかけても収益につながらないため、興味がない人が多い
  4. なんだかんだで出現率は低い(1%もないかと)
  5. 気づかないままで終わるケースも多い(検索パートナー枠への配信はクリック単価が低く、極端な数値の変動が起きないと気づかないケースも)
  6. 検知ツールもあるが、「そもそも Google すら検知できないものを一企業のツールで検知できるのか」という疑問がある上、「ツールで検知しレポートを媒体社に共有したところで、それが『不正であった』と判断されるには他情報(サーバーログなど)の提出を調査を進めていく中で求められることがあり、対応が難しい」といった実情もある
  7. そもそも「アドフラウド」という概念の浸透しきっていない(存在を想定されていない)
  8. 事象を開示することで確認と対策が進む一方、手法を知り模倣犯が出現するリスクが一定
  9. 自社および自分のチームが提出するデータの、そもそもの精度に懸念を持たれたくない(場合によっては予算の削減などにもつながる可能性があるため)

9.最後に

これは私見ですが、「8.なぜアドフラウドの問題の話が広がりにくいのか」にて、仮説の1つで挙げた通り、「そもそも獲得単価やROAS(獲得効率)、LTV 以外に興味がない人が多い」「日々の成果向上で精一杯」「工数をかけても収益につながらないため、興味がない人が多い」というのが、このアドフラウドの問題の話が広がらないことが主要因かと見ています。

ただし、すでにマス広告と Web 広告の日本における広告費が逆転するなど、Web 広告の方がある意味広告においてはメインストリームのような存在になりつつある事実がある一方、直近で経産省によって開かれたセミナー「経営層も知っておくべきデジタル広告の「買い方改革」の必要性~デジタル広告取引の健全化について、広告主・広告代理店・媒体社・行政機関が語る~に関するオンラインセミナー」において、アドフラウドや Web 広告の問題点が指摘されるほか、「そもそも海外では Web 広告に関してはアドベリフィケーションツールを導入し監視するのが一般的(日本は遅れている、そもそもそういった習慣がないまま Web 広告が浸透してしまった)」といった点についての問題提起もなされるなど、Web 広告に対するそういった点での関心の低さが議題に上がるケースも目立つようになってきているよう感じている方も、一定いらっしゃるのではないでしょうか。

特に今回のように、実際に被害を目の当たりにしたり、自分自身の案件でそういった事例が生じ当事者にならなければ、強く意識を持つことは難しいでしょう。

自分自身、今回事例に触れ「リスティング広告(検索広告)でこんなアドフラウドの事例(手口)があるのか」と、正直かなり驚かされましたし、この事例を踏まえてより一層、数値に対してシビアに見ていく必要性があるように考えさせられました。

自社運用の場合も代理店運用の場合も、このような事態に気づくには広告運用者自身が普段から数値に対して意識を持ち、気にかけ続けるしかありません。

「気づいた時には時すでに…」といったことがないよう、より一層注意する必要がありますね。

文責:川手 遼一