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ご存知の通り、Web の世界は技術発展やサービスの進化スピードが他業界に比べて早く、Web の世界に位置する Web 広告業界もその例外ではありません。
そのため多くの広告運用者は、例えば常に新しい媒体やメニュー、機能が登場しキャッチアップせねばならない状況に立たされたり、重要なデータが閲覧できなくなったり、その閲覧できなくなったデータを見る裏技的な手法を誰かが発見しシェアされ、そしてその手法が時間が経過すると使えなくなったり…といったようなイタチごっこに常に巻き込まれがちです。
それらの類の最新情報をキャッチアップし、学び続けることで「一時的に自分自身ができる事」は増えるかもしれません。
しかし、残念ながらそれらの多くは付け焼刃的なものに過ぎず、大抵の場合、それら数年もせず知識としては陳腐化していく運命にあります。
そのため「そういったものの習得や理解に時間を投資しすぎるのは、結構無駄なのでは?」と個人的には考えています。
またそういったものに時間や労力をかけすぎてしまうことで、本来身につけるべき技能が身に付かず、結果的に仕事を通じて得られる幸福度が下がってしまう…といったこともよくあることなのではないでしょうか。
では、逆に優先的に時間や労力を投資してでも、広告運用者が修練すべきスキルや取り組みとして、どのようなものが挙げられるのでしょうか。
話はちょっと変わりますが、今の市況を鑑みるに人手不足の状態は広告運用業界において今後も続くと思われます。
そのため、ひと通りの広告運用に関する技能を身につけておけば、少なくとも食いっぱぐれるといった事はないでしょう。
しかし、スキルは付け焼き刃だらけで「食いっぱぐれるといった事はない」という状態で、日々様々な人や仕事に携わりながらキャリアを進めていくという営みを続けていくことは、前述した通り、正直かなり幸福度が低いのでは?と自分は思います。
日々以下のような心理状態で、黙々と仕事に取り組んでいる広告運用者の方は多いのではないでしょうか。
「食いっぱぐれるという事はないと思うけど、正直仕事を通じて得られる幸福度が低く、日々漠然とした不安や渇き、焦燥感を感じながら仕事をしている」
自分自身はそういった状態に陥らないよう、日々高い幸福度を感じながら仕事ができるような状態を維持するよう努めています。
では「日々高い幸福度を感じるためにどのような取り組みを行なっているか」と言えば、本記事のタイトルにもある通り「人から必要とされ続ける」ための取り組みを行なっている、というわけです。
なので本日は日々漠然とした不安や渇き、焦燥感を仕事に取り組んでいる中で感じている広告運用者のために、自分自身が日々「こうすべきでは?」と考え、取り組んでいることについて解説していきます。
1つでも、2つでも取り入れていただき、少しでも楽になっていただける方が増えれば幸いです。
全部で7つあります。
目次
自分の運用結果と同じぐらい、あるいはそれ以上に人の広告運用はよく見るようにしています。
以前は社内の、特に上司の案件のレポートやら調整履歴なんかをよく見ていました。今は社外の人が作った広告なんかもよく見ています。
よく「見て盗め」とか言われますが、まあそういう感じかと。日々の業務の合間に「見ること」を習慣として組み込むと、自分自身では絶対に発想しえない広告なんかに出会うことができ、結果的に自分自身の広告運用に関する発想の幅も広がったりします。
最近だとマイ アド センターの提供が開始された影響で、Google 広告も色々と見やすくなりましたので、そういったものも早速活用しています。
参照:Google 広告で特定の広告主の広告が一覧で確認可能に
また弊社の場合、月に数回、広告運用に関する情報をシェアする社内勉強会があるのですが、そういった際には少しでも登壇者の方の発表において疑問に感じたことがあれば、例え登壇者が自分より明らかに年次の低いメンバーであろうと関係なく、率直に質問するようにしています。
せっかく時間を割いて参加しているわけですから、時間投資分のリターンを得るためにも、聞きたいことを全部質問すべきですし、教えて欲しいことは率直に伝えて教えを乞うべきです。
「質問する奴は偉い」という大変有名な言葉がありますが、そういうことです。
使えるものは何でも使いましょう。人の考えや、人の作ったものに、自分からどんどん触れにいき、そして考え続けましょう。
「1.人の運用を見る」でも紹介した通り、人の作った広告から学べることを多いのですが、広告を見ているだけで良い広告が作れるようになるはずもなく、やっぱり良い広告を作るには、実際に手を動かして場数を積んでおく事も重要です。
そもそも「良い広告」を見つける目を鍛える上で、大前提として自分自身が手を動かしておかないと、良し悪しの判断も難しいはずです。
自分が新人の頃は、リスティング広告はテキスト広告、拡張テキスト広告が主でした。
レスポンシブ検索が大半を占める現在と異なり「何が書かれているか」だけではなく、作り手が広告文にリズム調のようなものを込めることができ、それが結構パフォーマンスにも良い影響を与えていたので(たぶん)それを学ぶために良い広告を上司にシェアしてもらい、朝早くに出社し各100回それを写経する…といった狂気のような行為を度々やっていました。
今現在リスティング広告を写経するということはしませんが、良い商材を見かけたら広告ライブラリなどで他にどんな広告が配信されているのかを調べてみたりした上で、ノートにペンを走らせてみたり、時には Canva や Adobe Express などで「自分だったらこう作るかな…」といったぐあいにクリエイティブなどを試しに作ってみたりすることもあります。
広告運用者なのに広告配信結果の集計、報告書作成が業務リソースの大半を占めてしまい、結果「あれ…自分今年いくつ広告作ったっけ?」となっているようでは、例え優れた広告を作り出す技術を持っていたとしても、それを十分に発揮する事は困難なはずです。
そういった形に、自分自身をなまらせないためにも、手を動かすことが重要なのです。
大事なのは、とにかく実際に手を動かして練習することです。
どれだけ日々頭の中で考えをめぐらせたり、情報をインプットしていたとしても、アウトプットされたものがなければ価値はありません。初めのうちは「これはうまくいかなかったな」というアウトプットでも良いので、どんどん積み重ねていきましょう。
「これで完成…!!」となった広告をそのまま納品したり、即配信開始したりするのではなく、一旦手を止めてみて時間を置いた上で(できればひと晩)ブラッシュアップするといったことをよくやっています。
例えばリスティング広告を作った際、広告文を見ていると、どんなに一生懸命考え抜いた広告文であったとしても、一定時間おくと湧き上がってくるものです。
- そもそもこの言葉で通じるのだろうか
- この言葉遣いで齟齬が生じないだろうか
- 特定の見出しだけ表示された際に違和感のある表現になっていないか
- 説明文が片側しか表示されなくても伝えたいことを伝えられているか
- そもそもこれは広告で伝えるべきことなのか
- もっとエンドユーザーが潜在的に求めている一言を見出しに入れるべきではないか
1度制作した広告をブラシュアップする方法はいくつかありますが、例えば初心者の場合、広告に必要な「客観性」が広告をつい作り込んでいく中で失われてしまうことがよくあるので、それを補う方法として自分は「ひろゆきボイス」を使うやり方をオススメしていたりします。
他にも広告文の作り方については下記記事で解説していますので、興味があればそちらもご一読ください。
理解が深まってきたら文章に書き出して理解しようとするよりも、図に落とし込んで(つまり図解して) 理解しようとした方が素早く理解できたり、構造化されることで矛盾点に気付き自分の認識違いや間違いを発見出来たり、より正確に物事が理解できるようになることも珍しくありません。
少し抵抗を感じる人も多いかもしれませんが、図解したものはぜひインターネットを通じて世界中の人に開示してみましょう。
それによって助かる人もいるかもしれませんし、間違いを人から指摘してもらえる事で自分自身の理解をより深めることを実現できるかもしれません。もしかすると自分と同じように勘違いしていたり、誤解していた人の知識を正すことにも繋がるかもしれません。
自分もこんな感じに、定期的に図解したものを公開しています。
図解には、大きく分けて3つの役割があります。
- 情報を整理する
- 相手にわかりやすく説明する
- 自分自身の理解を捗らせる
要するに、図解することによって、または図解されたものを経由することによって「情報をより効率的に管理、伝達すること」が可能となります。
例えばですが、140文字ではとても伝えきれないことも、図解を挟む事でより多くの人に伝え、共感してもらったり、自分自身の考えを理解してもらうことが可能となります。
これらの図解スキルは、日々の広告運用業務の中でも下記のようなシーンで活きてきます。
- 複雑な事象や設定を第三者、決裁権者にわかりやすく説明する際
- 第三者が設定した複雑なキャンペーン構造や広告の設定を理解する際
- 商材の要点をまとめて理解したり、クリエイティブに落とし込む際
- 新しい媒体やメニューの理解を深めようとする際
また日々、良質な図解に触れておくことも重要です。いくら図解する習慣があったとしても、分かりにくい図解には意味がないので。
樋口先生の『改訂新版 広告コミュニケーション-マーケティングのメタ構想に向けて-』は学生自体から何度も通読していたりするのですが、 登場する自作の図解も明快で良いものばかりです。
ちなみに、社外の方と図解を制作する仕事もやったことがあるのですが、これはこれで、一人で図解を制作するのとはまた別の面白さがあり、制作フローなども1人で作るそれとは異なるため、デザインの工程などでも発見や学びが多く、とても良い経験となりました。
タレブも名著『身銭を切れ』のタイトルにもある通り、身銭を切ることも自分自身の学びや成長を促進してくれる、重要な取り組みの1つです。
例えば「自分が運用している商材でこの広告配信をしてみようか考えているけど、配信したことがないので不安だ」などと考える人は多いと思います。
しかしそれについて考える時間は無駄な場合が多く(考えたり悩んだりした上で着手したとしても配信パフォーマンスが良いという保証があるわけではないので)「配信したことがないので不安」なのであればさっさと自腹で配信して「配信したことがない」状態ではなくしてしまえば、案外心理的な不安は軽減されて「じゃあ提案して配信を開始しよう」と意外とスイッチが入ったりするものです。
例えば、日本では2022年6月からPinterest アドが正式に配信可能となりましたが、3月ごろから自分は自腹で「なんとか広告配信する方法はないか」と探り探り、色々と触り実際に広告配信をしたりしていました。
参照:Pinterest アド(Pinterest 広告)を日本国内に対して配信できないか試してみた
結果的に広告配信は出来なかったのですが、この経験を通じて設定方法などを事前に学ぶことができたので、結果的に正式サービスが開始された当初、素早く広告配信を展開し、先行者利益を確保しにいく動きを取ることができました。
参照:改・Pinterest アド(Pinterest 広告)を日本国内に対して実際に配信してみた
「そうは言っても…」という方は多いと思います。
端的に言えば、実は身銭を切る上で大事なのは決断力ではなく、さっとやってしまう行動力なんですよね。
例えば「Google 広告を仕事で触る機会が多々あるけど、正直よくわからない」のであれば、勉強用に Google 広告アカウントを必要最低限の設定さえすれば試験的に広告配信してみたりすることもできるはずです。
これらはものの数分で出来る取り組みですが、それでもやる人と、やらない人がいます。
自分の名前で広告配信する(多くの場合、広告費はかかっても月に数千円しかからない)のに「決断力」なんて必要でしょうか。
たぶん、いらないんじゃないでしょうか。
他にも例えば自分自身、このブログの運営も完全に持ち出しで運営していますし、広告の制作に関するツール(Figma やCanva も Adobe)はもちろん、仕事にも使ってる情報源・情報管理ツール(Evernote も Notion も毎日堂メルマガも)も自腹で払っています。
弊社の場合、申請すればこれらを経費にすることも可能なのですが、自分の場合は自腹で支払っています。
自分自身の場合、自腹でツールだったりを使用した方が、利用率も上がり結果的に早く仕事を覚えたりもするので、今後も仕事関連の小道具やツールの類は自腹のまま契約し続けるケースが多いはずです。
あとはクライアントの商材を自腹で買ってみたり、世の中で流行っているものや尖っているもの、自分自身で広告運用したら楽しそうだなと思うものを買ってみて、自分なりになんとなく広告案を考えたりすることもあります。
自分の場合、これらを実行する上で別に何か大胆に「決断」しているということは一切なく、ただ単に「面白そうだしやっちゃおう」と身銭を切っているに過ぎません。
またこれは一般論ですが、やっぱり身銭を切った方が、少なからず真剣度は上がるように思います。
例えば、広告の制作1つとっても、自腹でクライアントの商材を購入した経験があれば「このぐらいの広告でいいかな?」とはならず「この商材は1万円する。自分はこの商材のターゲット層からちょっと外れているけど、それでもこの広告に遭遇した時に1万円支払ってでも物が欲しくなるぐらいには広告が魅力的に作りこめているか?」といった考えが広告制作をする際に常にチラつきます。
リアルに1万円を投じたことがあるからこそ、1万円という値段をリアルに感じ、考えることができるようになるんですよね。
そしてこの「チラつき」がクリエイティブに反映されることによって、後々に圧倒的なパフォーマンスの差をもたらしてくれることがあるんです。
大事なのは理論とかロジックではなくて、財布事情も勘案した上で、無理のない範囲で身銭を切ることです。
とにかく、まずは身銭を切りましょう。
自分は以前にも別記事で書いた通り、広告はコミュニケーションだと考えています。
少し話が脱線しますが、自分は、広告はコミュニケーションだと考えています
「運用型広告のセカンドオピニオンを実施する際に見ている7つのポイント」より引用
「広告を通じたコミュニケーション」というと、エンドユーザーと広告のコミュニケーションのみをイメージしてしまう人も多いかもしれませんが、実際の広告運用業務においては様々な人間が介入するため、対上司、対クライアント、対決裁権者などとのコミュニケーションが重要となってきます。
円滑なコミュニケーションを行うためには、事前準備が必要です。それらについては下記連続ツイートの中でも BtoB マーケティングの文脈で解説しているので、そちらもご参照いただければと思います。
単純な対クライアントワークに関するコミュニケーションについては、過去下記記事にてまとめて言及していますので、そちらもご参照ください。
参照:広告運用初心者がまず取り組むべき6つのポイント|最速で広告運用スキルを技術習得|川手 遼一|note
大事なのは、対話を重んじることです。
人間は定期的なフィードバックなしには成長できないので、個人事業主であれば直接顧客から、会社員であれば上司に評価してもらう必要があります。
目標設定については基本的にサラリーマンの場合、一番良い方法は評価者(多くの場合は上司、または上司の上司)に定量目標を設定してもらい、それを黙々と達成できるように日々目の前の仕事に取り組んでいくやり方が一番良いやり方ではないでしょうか。
目標設定をしっかりとしていないがために、時間と頭脳をいくら投資しても解決できないような悩みや不安にそれらを投じてしまったり、肝心の広告運用業務がおざなりとなり運用結果が振るわなくなってしまったり、そういった人を、自分は社外でいくらでも見聞きしてきています。
自分の場合、形は変わりましたが今でも毎月定量目標と定性目標の振り返りを上司と実施しています。「そういう中途半端な人間にだけにはなりたくないな」というのも、目標を日々追い続ける理由であったりします。
重要なのは正しい目標を設定し、それに向けて自分自身をとにかく没入させる事です。
上記1.〜7.を実行していれば、基本的には様々な人から必要とされ続け、幸福度がそこそこ高い状態を維持しながら仕事に取り組めるはずです。
加えて、本記事では詳しく言及しませんでしたが、社会人として必要最低限身につけておくべき決まり事(時間、約束、納期を守るなど)を守れているとなお良いでしょう。
社会人として必要最低限身につけておくべき決まり事は、クリエイター気質の強い広告業界では案外軽視される傾向もあるかと思いますが、自分は重要視しています。
オグルヴィも名著『「売る」広告』にて「規律は役に立つ」と言及していますが、個人的には同意見です。この点については話が長くなってしまうので、また別の機会に言及したいと思います。
本記事を最後まで読んで下った方の中には、冒頭でお伝えした不安や渇き、焦燥感を日々強く感じていらっしゃる方が多くいらっしゃるかもしれません。1つでも、2つでも、無理のない範囲で取り入れていただき、少しでも楽になっていただける方が増えてくだされば、これ以上の喜びはありません。
文責:川手遼一