Microsoftのサイト訪問者分析ツール「Clarity」とは?設定方法や使用方法、注意事項について

2018年にβ版が公開されていた Microsoft の Clarity が2020年10月29日に一般公開されました。

この記事では Clarity に関する基本的な情報や設定方法や使用方法、使用上の注意事項についてまとめて記載しています。

注意事項

【注意】「ユーザーヘルスケア、金融サービス、または政府関連情報を含む機密データを含む Web サイトでClarityを使用すべきではない」という旨が公式ヘルプ上には記載されています。これらのデータを含むサイトにはClarityの導入今一旦見送る形を推奨します。詳しくはこちらの記事でも解説しています。

目次

そもそもClarityとは?

Clarity とは Microsoft が提供している、ユーザーのWebサイトとの対話を理解するのに役立つ最先端の行動分析ツールです。完全無料のツールでありながらも「セッションのレコーディング」「ヒートマップ」「インサイト」といった機能を有しています

また一部サイトでは「Microsoft Clarity」という名称で紹介されていますが、公式には「Clarity(クラリティ)」です。詳しくは下記公式ヘルプをご参照ください。

参照:What is Clarity?

またClarityには Clarity ならではの特徴が5つ存在します。その点についても解説していきます。

Clarityの5つの特徴

5つの特徴については、下記のとおりです。

1.費用は無料

商用サイトであったとしても無料で登録し利用することが可能です。

2.セッションのレコーディングに対応

Clarity ならではの魅力はなんと言っても「セッションのレコーディング」に対応しているという点にあります。

つまり実際に Clarity を設置すると、実際にどのようにユーザーが記事を読んでいるのかを下記図のように見ることができるようになるのです。

ユーザーのマウスカーソル、スマホの画面タップがレコーディングされ、レコーディングされたものは管理画面上で下記のように確認する事ができます。

また情報漏洩についても対策がなされています。

マスキング機能がデフォルトでONになっており、ユーザーが入力した個人情報などは目隠しがされる仕様になっています。マスキングは3段階での加減調整です。

マスキングについては下記記事にて詳細に解説しているので、興味がある方はそちらをご参照下さい。

3.クリック、スクロール、エリアヒートマップ機能も搭載

一 般的なヒートマップツールに搭載されているようなスクロールやクリックヒートマップ機能も搭載されています。

クリックヒートマップ

主に5つのクリックを計測することができるものになります。

  • 全てのクリック(以下4つを含むクリック)
  • 非リンク外のクリック:リンクが設定されていないところでクリックされた箇所
  • 熱狂的クリック:他に比べて数多くクリックされた箇所
  • ファーストクリック:はじめて生じたクリック
  • ラストクリック:最後に生じたクリック

以下図のような形で Clarity 管理画面上で確認可能です。

スクロールヒートマップ

ページの長さが最適かどうか、特定箇所以降でユーザーがコンテンツから離脱していないかなどを見るために活用されるものになります。

Clarity 管理画面上では右側に実際のページ、左側にはどの程度のユーザーがどの程度までスクロールしているのかを確認可能です。

エリアヒートマップ

例えば、特定のページの特定のエリアのクリックがどの程度されているのかなどを見る際に活用されます。クリックヒートマップと異なり、例えばカラム別にユーザーがどの程度サイトのコンテンツに対して注視しているのかなどざっくりとした分析をしたい際に重宝します。

以下図のような形で Clarity 管理画面上で確認可能です。

4.セッション数に制限なし

Clarity を設置したサイトに関し、Clarityのデータ取得についてセッション数に制限はありません

そのため小規模サイトから大規模サイトまで導入可能です。

大規模サイトに関しては既に有料の上位互換となるようなツールを導入しているケースもあるかとは思いますが、費用面で敷居が高く、今まで手が届かなかった方も多かったのではないでしょうか。

そんな場合は Clarity がオススメです。Clarity であればセッション数に制限なく、無料で使用し続けることが可能です。

5.Google Analyticsと連携しデータの受け渡しが可能

2020年11月4日から GA との連携が可能になりました。また2021年4月よりGA4 との連携も可能になっています。

参照:Google Analytics integration

GAと連携させるメリット、具体的な方法や注意点については下記記事にて詳細を解説しているので興味がある方はご参照下さい。

6.データ保有期間は無制限

データの蓄積に期間的な制限がありません。管理画面上「 Time frame 」では以下のように5つの期間を選択し、該当期間のデータを確認する事が可能です。 

  • Today
  • Last 3 days
  • Last 7 days
  • Last 30 days
  • Custom

しかし早めに設定しなければ、結局データをストックしておくことはできません。もし導入を検討されているのであれば早期導入をオススメします。

Clarityの初期設定方法

公式サイトに登録するところから、サイト内にタグを設置するところを含めた初期設定の手順としては、下記の通りです。

  • 公式サイトにアクセス
  • 登録を済ませ情報を入力
  • タグをWebサイトに設置(GTMでの設置可)

ある程度慣れている方であれば数分で設定可能です。タグの発行や GTM 上の設定方法については下記記事にて詳細を解説しているので、興味がある方はそちらをご参照下さい。

Clarity を使用することでできるようになる3つのこと

Clarity を導入しデータを集め分析を行っていくことで、下記3つのことができるようになります。

(1)Webサイトのどこをユーザーがどう見ているのかがよくわかるようになる

「セッションのレコーディング」によって記録されたセッションの記録を映像で見ることにより、より具体的にユーザーがWebサイトのどこをユーザーがどう見ているのかが具体的にわかるようになります。

特に重点的に見られているテキストや画像、動画なども視覚的に見えるようになるため、それらをベースにランディングページの改良などを実行可能になります。

(2)わかりやすい素材で他者に理解を促すことが可能に

リテラシーの高くない決裁権者や意思決定者に伝わりやすい、理解しやすい素材を用意することが可能となります。例えばGAの「ユーザーエクスプローラ」を直接見せるよりも Clarity の「セッションのレコーディング」を直接見せた方が、相手のリテラシー度合いに関係なく理解が容易です。

(3)問題点の明確化、可視化、解釈の余地のない話し合いの場への素材提供

例えばサイトをより良くしていこうとすると、事実ではなく個々人が解釈をぶつけ合い、「自分はこうだと思うんだけど」といった議論に発展してしまうことが多々あります。しかしそういった議論から建設的な議論に発展することは非常に稀で、実際には Clarity 経由で取得したデータを確認し、事実をテーブルの上にのせて話し合いをした方がサイトをより良くしていく上で効率的であったりもします。

導入前に知っておいた方が良い8つのポイント

導入前に知っておいたほうがいい7つのポイントについて、こちらでまとめて紹介しています。

(1)セキュリティ面について

リリース以降1度も脆弱性が指摘されたことはありません。

(2)反映スピードについて

初期設定後の反映スピードは若干個体差のようなものがあるように思います。サイトの規模感などによる影響は殆どないものと思われます。そのため初期設定を行い、2時間待ち数値が一切反映されないようであれば設定ミスを疑いましょう。

(3)レコーディングしたデータの共有方法

レコーディングしたデータを共有することも可能です。共有したいレコーディングを開き、右上部ボタン(下記図赤枠)をクリックするとURL共有が可能です。

クリックすると、以下のような画面が表示されます。権限が付与されているメンバーに共有する場合は下記図赤枠内「With project team」を選択し、URLをコピーし共有したい相手に渡すだけで共有可能です。

権限が付与されていないメンバーに共有する場合は「 with anyone 」をクリックし、期間を指定し数秒待つと期間限定でデータを確認できる URL が発行されます。URL を共有したい相手に渡すことで、URL 経由で権限が付与されていないメンバーもデータを確認可能になります。

権限が付与されていないメンバーに共有する場合は、最大30日しか確認可能な URL を作成することしかできません

有効期限がない録画データを共有したい場合、公式が用意しているもの以外のツールを用いて、例えばツールを用いて画面録画を行いそれを共有するなどの対応が求められます。

Mac なら特定のコマンド操作をすることで画面録画が可能です。

例:Command+Shift+5 で「画面全体を収録」をクリックすることで画面録画が可能

Windows の場合は Chrome の拡張機能を使うことで画面録画が可能になりますので、一例として、ここでそういったものの使用をオススメします。

参照:Google Chrome用スクリーンレコーダー

(4)権限付与について

権限付与が可能です。詳細は下記別記事にて詳しく解説しているのでご参照下さい。

(5)データ保有期間について

タグ設置後は無制限です。

(6)膨大なレコーディングデータをどのようにマイクロソフトは管理しているのか

最後にレコーディングされたデータをどのようにマイクロソフトが管理しているかについてですが、まずレコーディングされているデータは「単純録画」ではありません

ピクセル単位でのデータのみをレコーディングし( Session Recordings )再生時にレンダリングしているようです。

自分も社内の詳しい方に聞くまで気付きませんでしたが、それ故に動画を単純に撮影するよりもデータ量も少なく、サイトの読み込みスピードにも影響を与えず、サクサク機敏に動くことを可能としているようです。

(7)IPアドレスを用いた除外設定について

2021年4月より IP アドレスによる除外設定が可能となりました

これにより、社内や特定の個人(管理者など)からのアクセスといった内部トラフィックを除外した上でのデータ収集が可能となります。

IPアドレスの除外は下記図サイドメニュー「IP blocking」より可能です。

「+ Block IP address」(下記図赤枠)をクリックすると、下記図のように「Name」「IP address」と表示されます。

「Name」には管理上の名称を、「IP adress」には IP アドレスを入力します。ちなみに今現在アクセスしている環境を除外したい場合、チェックボックスの「Block my current IP」をチェックすれば IP アドレスの入力なしに除外設定が可能です。

クライアントや特定の端末からのアクセスを収集しないようにする場合、以下のような IP アドレスを確認できるサービスなどを利用し除外設定を行います。

(サービス例)アクセス情報【使用中のIPアドレス確認】

赤枠内に IP アドレスが表示されますので、そちらを確認し設定します。

(8)導入できないタイプのサイトについて

ユーザーヘルスケア、金融サービス、または政府関連情報を含む機密データを含むサイトでは使用しないでください」と下記ヘルプ上に記載されている通り、これらに該当するサイトの場合は Clarity を導入してはいけません

Clarity should not be used on sites that contain Sensitive Data including user health care, financial services or government related information.

Clarity 管理画面より引用

(9)Microsoft 広告の UET タグ設定時にチェックを入れるとアカウントが自動生成される

Microsoft 広告にてUETタグを設定する際にチェックを入れると Clarity も自動的に設定されます。

例えば上記「(8)導入できないタイプのサイトについて」にて触れた通り、ユーザーヘルスケア、金融サービス、または政府関連情報を含む機密データを含むサイトの集客の一環で Microsoft 広告を使用する場合はこれを有効にしてしまうと非常に危険です。

この点については下記記事でも詳しく解説しているので、そちらをご参照ください。

参照:Microsoft 広告を運用する上で知っておくべき30の注意事項

Clarity を使用する上で注意すべき3つのポイント

Clarity を使用する上で、注意すべきポイントが3つあります。その点についても説明していきます。

(1)意図したデータを作り上げてしまう危険性について

仮説を立ててデータを確認し事実確認をする際に「仮説」に縛られ、仮説を立証するためのデータ集めをしてしまうということはよくあることです。Clarity の「セッションのレコーディング」は数値の羅列のようなデータよりもわかりやすく、誰が見ても明快に見えるため、その傾向を強めてしまう危険性があります。

(2)分析をする際は目的を持って明確かつ計画的に

「データ分析をしよう」とするとついダラダラと見れしまうことは多々ありますが、「セッションのレコーディング」はよりその「ダラダラ」を加速させます。

サイト内のセッション別の行動履歴はGAの「ユーザーエクスプローラ」などでも確認可能でしたが、実際にユーザーの動きが動画として確認できる「セッションのレコーディング」をつい無目的に見続けてしまう人は多いのではないでしょうか。

そのためもしデータを確認する場合、下記のような形で使用される事をオススメします。

  • 確認するサンプルデータ数を事前に明確化した上で確認
  • 分析対象のページを事前に選定しスポットで分析
  • 目的と時間を明確化の上でデータを確認する

(3)無料ツールであることを正しく理解する

無料ツール故データに過度な期待や性能向上を期待するのは避けるべきでしょう。あくまでも無料ツールですから、使用するのであればありがたく利用させてもらいましょう。

最後に

まずは「面白いおもちゃ」として使ってみる感覚が必要かと思われます。そして事前に改善を行うと想定し設定した場合、有意性のあるデータ収集期間として2〜3か月ぐらいは最低でも必要となりますので、遅くとも具体的な改善アクションを実行する2〜3か月前までには、サイト内に Clarity を設置するといった動きを取るべきです。

また Chrome ウェブストアから「Microsoft Clarity Live」という公式の拡張機能も登場しています。

参照:Microsoft Clarity Live とは?

こちらも利用できるようになっておくことで、より分析作業が容易にできるようになるため導入しておくことをオススメします。

文責:川手遼一