TrueView アクションとは?設定方法と純新規ユーザーからコンバージョンが取れるYouTube広告を制作する上でのポイントについて解説

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注意事項

Google より正式アナウンスがあった通り、2021年9月30日をもって TrueView アクションキャンペーンは新規作成ができなくなります。また2022年4月25日以降に既存の TrueView アクションキャンペーンも含めて、動画アクションキャンペーンへと自動移行されることが予定されています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

YouTube で動画を再生した際に本編視聴前に再生される動画広告、いわゆる YouTube 広告が始まったのは2010年頃からです。当時は主に認知を目的としたものが多く、いわゆる獲得が可能な(つまるところ「購買」や「申込み」などのコンバージョンが獲得できる)広告としての地位が確立したのはここ数年の話です。

つまりそれまでは「コンバージョンが YouTube 面でバンバン取れる」といったことは YouTube 広告上ではなかったわけです。

自分自身が動画広告に興味を持ったのは昨年〜今年の年始頃のことです。特に鈴木さん@yusuzu06 の『動画広告“打ち手”大全』を読み、購入特典のウェビナーなどで質問をしアドバイスを頂き、それをキッカケに動き始めました。

はじめは Facebook 広告(動画広告)に手を出し、緊急事態宣言中には自分で動画広告をクライアントに企画提案し、撮影・編集・配信(+運用)などをしていました。

そして一連の流れに身を置く中で動画広告に強い可能性を感じ、つい先日から YouTube 広告の運用を開始しました。

配信開始から1ヶ月もまだ経っていないのですが、結論から言えばスタートダッシュと同時にバンバンコンバージョンが獲得できており、実際に Google 広告アカウント内では、以下のような動きが見受けられます。

  • 一時は検索広告以上にコンバージョンを獲得
  • 純新規ユーザーを検索広告以上に効率的に獲得

「YouTube広告=コンバージョンが取れない」という強烈なイメージに縛られていた過去の自分が如何に機会損失をしていたのかと思い知らされました。

下図の数値は実際のデータではないのですが、傾向として実際のデータを参考にどのようなパフォーマンスになったのかをまとめたものです。コンバージョンの定義は購入、申し込みです。

他のディスプレイ広告や検索広告に影響を与えず、純粋に YouTube 広告で純新規ユーザーにアプローチできており、コンバージョンを純増できているような形になっています。

本日は TrueView アクションについて触れ、「具体的にどのような動画広告を制作し配信すればいいのか」や「どのような体勢で運用(運用者の動画広告に関する理解・学習を含む)すればいいのか」といった点についても触れていきます。

また本記事内ではアプリダウンロードなどのような比較的コンバージョンハードルの低いものや、認知目的の動画広告ではなく、主に検索広告などでコンバージョン獲得することが主なケースである BtoC 商材などを例に「如何にすればコンバージョンの取れる動画広告を制作・運用できるのか」という点について触れていきます。

目次

そもそも TrueView アクションとは?

(1)TrueView アクションとは

そもそもTrueView アクションとはどのようなものなのでしょうか。公式ヘルプ上では下記の記載されています。

TrueView アクション キャンペーンでは、人目を引く「行動を促すフレーズ」、テキスト オーバーレイの見出し、終了画面を動画広告に追加することで、見込み顧客の獲得とコンバージョンを促進します。この動画キャンペーンのサブタイプを使って、ユーザーが対象の商品やサービスについて詳しく調べたり、連絡先情報を登録したりするなど、その後のビジネスにつながるようなアクションを促します。

TrueView アクション キャンペーンを作成する」より引用

つまり、「ただ YouTube で動画本編視聴前に流れてくる広告」というだけではなく…

  • 人目を引く「行動を促すフレーズ」
  • テキスト オーバーレイの見出し
  • 終了画面を動画広告に追加

これらが動画広告内に加わっており、ランディングページへの遷移をより促すことが可能となっている広告ということになります。そして公式ヘルプ内の「クリエイティブに関するガイドライン」を見ればわかる通り、サイトリンク・リードフォームも要件を満たしている場合は設置することが可能な広告です。

(参照)「TrueView アクション キャンペーンを作成する」内「クリエイティブに関するガイドライン」

つまりTrueView アクションとは、指定したページに遷移させることが可能なリンクを設置することができる、ユーザーによる自発的な行動(商品認知に留まらず、特定のサイトへの遷移、コンバージョンなど)により期待が持てる動画広告のサブタイプの1つです

数ある YouTube 広告のメニューと比較した際に、TrueView アクションはTrue View インストリーム同様に「スキップ可能なインストリーム広告」にあたります。そのため公式ヘルプなどを参考にする際は「TrueView アクション」だけではなく「TrueView インストリーム」のヘルプを参考にしなければいけないケースもあり、また営業担当者を通した予約必須のマストヘッド広告などに比べると予約必須ではない、通常の管理画面から手軽に出稿可能な YouTube 広告にも分類されるという特徴ある広告に該当します。

動画広告フォーマットの概要」を参考に作成

(2)広告形式について

TrueView アクションの広告(動画)の用件については以下の通りです。

動画の長さ12秒〜3分(視聴回数を重視される場合は動画の長さを 12 秒以上にすること)
アスペクト比横長:16:9か 縦長: 9:16 かスクエア: 1:1、またはその両方
上記表は公式ヘルプ内「スクエア動画や縦長の動画を使ってモバイル ユーザーにアプローチする」「TrueView インストリーム広告」を参考の上作成

また公式ヘルプ「TrueView インストリーム広告」の「YouTube の動画設定」にも記載ある通り、前提として YouTube に動画がアップされており、公開、または限定公開にされていることが条件となります。また自身がアップした動画か否かに関わらず、広告として使用することが可能です。

(3)配信面について

TrueView アクションは YouTube 広告の1つとして数えられることが多く、配信面= YouTube のみと認識しているケースが多いのですが、実際には YouTube 以外にも配信されます。

その点詳細は以下公式ヘルプに記載されています。

TrueView インストリーム広告は、YouTube で配信される動画のほか、Google ディスプレイ ネットワーク上のサイトやアプリに掲載されます。また、YouTube 以外のサイトやアプリに埋め込まれた YouTube 動画にも配信されます。Android と iOS の YouTube アプリ、m.youtube.com(iPad や Android で視聴した場合)、インターネット テレビにも掲載されます

TrueView インストリーム広告」より引用

Google 広告管理画面上の区分は次の通りです。

  • YouTube 検索
  • YouTube 動画
  • ディスプレイ ネットワークの動画パートナー(ウェブサイト・アプリ)

これらは選択式で配信対象から除外・絞り込みを行うことが管理画面上で可能です。(詳細後述)

(4)注意点

注意点は3つあります。

1.表記上のコンバージョン率

1つが管理画面上に表示されるコンバージョン率です。TrueView アクションキャンペーンのコンバージョン率はクリック数ではなく、視聴回数をベースに算出されます。図解すると次の通りになります。

Google 広告管理画面上の数値をベースに作成

そのため管理画面上のデフォルトのコンバージョン率に対して低く感じる人もいるかもしれません。レポートなどでクライアントに共有する際にもコンバージョン率の低さを指摘される可能性も考えられます。

また日々の運用で不便に感じる場合「表示項目」内の「カスタマイズ」にてクリック数をベースにしたコンバージョン率を算出する項目を作ることなども作成可能です。レポート上の表記を統一する関係上で必要な場合など、必要に応じてご活用ください。

【参照】「表示項目をカスタマイズする

次に注意すべきは動画の名前です

2.動画の名前は限定公開でも場合によっては第三者から特定可能

広告として使用する動画は YouTube に事前にアップしておく必要性がありますが、実は YouTube 広告で使用されている動画 URL は Google Chrome からであれば「デバッグ情報をコピー」することで URL を特定することが可能です。以下は実際に動画の名前を取得する流れです。

そのため URL を特定されると動画名も明確化されてしまうため動画名は外部の人に見られることを意識して設定すべきです。

「人に見られたら恥ずかしい名前」が表示されてしまう程度であれば可愛い方ですが、場合によってはテスト内容が名前に反映されていて、競合にテスト内容が露見する危険性があります

そのため動画の名前は外部に露出しても大丈夫なものを設定しましょう。 

最後に注意すべきはデフォルトの設定ではビュースルーコンバージョンもコンバージョンとして計測されてしまうという点です。

3.ビュースルーコンバージョンもコンバージョンカウントされてしまう点

デフォルトの設定ではビュースルーコンバージョンもコンバージョン計測の対象になっているという点です。こちらについて詳しくは下記別記事にて解説しているためそちらをご一読下さい。

「管理画面のコンバージョン数がいい感じだったので配信量を引き上げたが、実際には管理画面上のコンバージョン数と実コンバージョン数で大きく乖離があり、目標値とかけ離れた数値で着地することになった…」となっては元も子もありません。

(5)配信可能な広告メニュー

配信可能な広告メニューは下記の通りです。これらのメニューを掛け合わせ、あるいは単体で広告配信をすることが可能です。

配信可能メニュー詳細
地域国、都道府県、市町村区などを指定可能
言語言語を指定可能
年齢18〜64歳を5段階で指定可能。65歳以上、不明も選択可
性別男性、女性、不明から選択可能
子供の有無子供あり、子供なし、不明から選択可能
購買意向の強いオーディエンス
ライフイベント最近結婚した、引越した、転職したユーザーに広告配信可能
デバイスPC、スマートフォン、タブレット、TVから選択可能
世帯年収
カスタムオーディエンスキーワード、URL、アプリ、場所からリストを作成可能
購買既存オーディエンスによる広告配信
リマーケティング過去サイト訪問者、アプリ利用者に広告配信
動画リマーケティング動画、TrueView 広告、YouTube チャンネルに対するユーザーの視聴、操作履歴に基づき広告配信
カスタマーマッチオンラインやオフラインの自社データ(例:メールアドレス)を用いてユーザーに広告配信
類似ユーザー自動作成された類似ユーザーリストを用いて広告配信
トピック指定キーワードと関連性の高いサイト、動画に広告配信
プレースメント指定のサイト、YouTube動画、アプリに広告配信
キーワードキーワードを指定しと関連性の高いサイトや動画、YouTube チャンネルに広告配信
ブロードリストやオーディエンスを紐付けず、年齢、性別、地域などのみを指定して広告配信
動画キャンペーンのターゲティングについて」と管理画面をベースに作成

(6)動画個別のパフォーマンス確認方法

動画個別のパフォーマンスは動画広告を配信開始後に「広告」からも「動画」からも確認可能です。確認画面は次のような形になります。

管理画面キャプチャをベースに作成

動画に関しては下記項目などをはじめ、多くの数値を細かく確認することが可能です。

  • 視聴率
  • ユーザー離脱のタイミング
  • 再生開始から100%視聴までの視聴者数割合
  • デバイス、オーディエンス別の反応

Google広告管理画面上の設定方法について

Google 広告の管理画面上の設定方法についても触れていきます。

(1)新規キャンペーンの作成

まずは「+」ボタンを押して、キャンペーンを新規作成し進めていきます。

目標設定としてここでは「販売促進」キャンペーンタイプでは「動画」を選びます。

ちなみにコンバージョン実績がないアカウントの場合、下記のように表示されるので注意が必要です。

このように表示される場合、まずはコンバージョントラッキングを設定し、コンバージョンタグが正常に発火することを確認してから進めてください。

次にキャンペーン名を設定します。ここでは例として「PPC-LOG」を設定します。

入札戦略としては「目標コンバージョン単価」「コンバージョン数の最大化」を選択可能です。ここでは仮に「コンバージョン数の最大化」を選択します。

予算と日程を設定します。ここでは仮に日別予算を「¥10,000」と設定します。

ネットワーク(配信先)を選択します。

「地域」「言語」を設定します。

「コンテンツの除外」は触らなくても大丈夫な部分になりますが、ブランディングやクライアントの意向が強い場合、広告配信対象を事前に絞り込み除外することが可能です。

下記のように「広告枠のタイプ」を選択できます。デフォルトでは「標準広告枠」になります。

「除外するコンテンツタイプ」なども選択可能です。ここも通常配信する場合は特に設定を変更せず進めてしまい問題ありません。

「広告表示オプション(現在は「アセット)」」としてサイトリンク表示オプションなどを選択可能です。

「その他の設定」から最適化に用いるコンバージョン、デバイス、フリークエンシーキャップ、スケジュールを設定可能です。

(2)広告グループを設定

次に広告グループの設定を進めていきます。まずは「標準」と「レスポンシブ」から選択可能です。ここでは「標準」を選択します。ちなみに「レスポンシブ」を選択すると「Video Action Campaign(動画アクション キャンペーン)」という TrueView アクションの上位互換的広告配信が可能な広告グループを作成することになります。詳しくはこちらの記事にまとめているので気になった方はそちらも是非。

広告グループ名として、ここでは例として「PPC-LOG」を設定します。

「ユーザー属性」、「オーディエンス」を設定していきます。

「ユーザー属性」では性別、年齢、子供の有無、世帯収入などを設定可能です。オーディエンスではリマーケティングリストなどの紐付けが可能です。

「コンテンツ」ではキーワード、トピック、プレースメントを設定可能です。キーワードを設定することでそれに類した広告枠、配信面に広告配信が可能となります。

「トピック」を選択することで、それらのトピックに興味があるユーザーに広告配信が可能になります。

「プレースメント」を設定し、特定の広告枠(YouTubeチャンネル、アプリ、ウェブサイトなど)に広告配信が可能です。

(3)広告を設定

最後に広告を設定していきます。動画は YouTube 内から URL を入力し選び選択します。全体的に赤枠で選択している箇所を入力していきます。

広告のプレビューを URL から展開することも可能です。それらの URL はクライアントや管理画面閲覧権限のないユーザーにも共有することも可能です。

純新規ユーザーからコンバージョンが取れるYouTube広告を作り込む上で抑えておくべきポイント

純新規ユーザー(過去1度もサイトに訪れたことがないユーザー)から TrueView アクションでコンバージョンの直接獲得を狙う動画を作り込む上で、次の3つのポイントを抑えておく必要性があります。

(1)ユーザーにとって有益な情報を1つだけ伝える

通常の検索広告、ディスプレイ広告でも同様ですが「伝えたいこと」ではなく「ユーザーにとって有益な情報」を伝えるようにしましょう。「有益な情報」以外は見向きもしないユーザーが大半です。そのため「ユーザーにとって有益な情報」の入った広告を制作しましょう。そしてたとえどれだけ有益性が高い情報であったとしても、伝えるべき情報は1つに絞り込むべきです

例えば石井さん@IshiiKensuke は以前に note でエンドユーザーに「3つの不(不安・不満・不便)」を商材を通じて如何に取り除くことができるかということを伝えることが重要なのかという指摘をしましたが、これは動画広告を作り込んでいく上でも同じことが言えます。つまり、ユーザーにとっての不満を1つ例にあげ、それを深堀りしていき、それだけに特化したとても極端な動画広告を作っていくようなイメージです。

【参照】【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書

また一次情報収集を通じ、エンドユーザーのニーズを深堀していき、突き詰めた結果「動画広告で伝えるべき唯一の情報」を見つけたのなら、それを動画広告に落とし込むという手法も有効です。

とにかく複数の情報を伝えようとせず、要点は1つに絞り込み動画広告は制作すべきです。そしてのその絞り込まれた要点は、ユーザーにとって有益なものであるべきです。

(2)動画である必然性を備えている

この点については以前にも note で触れたのですが、動画である必然性を備えているか否かは非常に重要な点です。「え?それ検索広告でよくない?テキストで伝えればよくない?音声広告でよくない?」というような動画広告をいくら量産したとしても、爆発的なコンバージョンの増加は中々起こり得ません。

もしかするとリマーケティングなら獲得可能かもしれませんが、純新規ユーザーからの直接コンバージョン獲得を動画広告で実現する場合、動画である必然性を備えていない動画広告でそれの実現は困難です。

この点については以前にもツイートしたとおり「これ本当に動画広告でやる意味ある?」と自分に問いかけてみることで確認する必要があります。

下記ツイートを参照していただければおわかりの通り、動画広告をせっかく配信するのであれば、「動画」というメディアの価値を最大限に活かした広告展開をすべきです。動画の備えている基本特性に逆らい動画広告を作っても、それは動画広告としての価値を発揮できないはずです。

(3)オリジナリティあるものを制作する

特にクライアントによってはアフィリエイターと広告代理店の両方使っているケースも珍しくありません。そういったケースで自分が広告代理店の人間だった場合、一介のアフィリエイターには模倣できない動画広告を作成すべきです。

例えば簡易なアニメーション動画などは比較的誰にでも制作可能です。しかしクライアントとの密接な連携や信頼関係があるからこそ作れる動画広告(例えばエンドユーザーインタビュー動画広告、イメージキャラクターとして契約している芸能人を用いた動画広告など)は誰にでも制作・配信できるわけではありません。もちろん良い動画広告(=コンバージョンが取れる動画広告)であるという前提はあるのですが、オリジナリティある良い動画広告であるべきです。

またオリジナリティある動画広告は競合他社も簡単には模倣できません。そしてオリジナリティあった上で広告効果の高い動画広告は息が長く(=広告効果が落ちにくい)継続的にコンバージョン獲得に貢献します

動画広告を始める前に始めたこと

次に自分自身の体験をベースに、動画広告を始める前に始めたことについても触れておきたいと思います。まず自分の場合、クライアントさんに YouTube 広告を依頼するにあたり、事前に動画投稿をお願いしたりするほか、絵コンテを描くなどを進めてきました。それらについても解説していきたいと思っています。

(1)アカウントを作成し動画をアップしてもらう

まずはクライアントさんにお願いしてアカウントを作成してもらい、動画を定期的にアップしてもらいました。動画広告に転用するしないに関わらず、まずはクライアントさんにお願いして「YouTube」に対する理解を深めてもらう必要性があると考えたためです。

(2)企画書、絵コンテを書く

次に動画広告の企画書、絵コンテを書きました。企画書は月次のミーティング資料の中に入れても良いと思いますし、絵コンテはネット上にフリー素材がたくさん存在しているのでそれらを使う形で問題ありません。

企画書を作成する上では以下の点を明確化してください。特に最初の動画広告は企画書を先に書き、合意の上で進めないと途中でコンセプトがブレてしまうことが多々あります。

そのため以下は最低でも明確化させた上で話を進めることをオススメします。

  • 予算
  • 動画納品予定日
  • 配信期間
  • ユーザー属性
  • 動画の目的
  • 動画広告を配信する理由
  • 責任と役割の明確化(詳細後述)

(3)プロの編集者さんに入ってもらう

編集は実績あるプロの方に入ってもらった方がいいでしょう。トランジションや効果音の細部に至るまで監修し的確な指示を出すことは、動画に関する専門知識のない広告運用者には困難です。

シンプルな動画であれば自身で撮影、編集含め実施可能ですが、ある程度作り込む以上、実績ある方にお願いするのがベストです。

(4)動画の準備、公開、広告の配信開始

動画広告に使用する動画を用意し前述(1)で用意したアカウントにアップし公開、または限定公開します。そして動画 URL の共有を受けた後、広告配信を進めていきます。

YouTube広告を始めてからの動き

YouTube広告を実際に配信開始してからの動きについても解説していきます。自分は広告代理店に所属している人間ですので、あくまでも「代理店内でどのように立ち振る舞っているのか」という点で主にお話をできればと思います。

(1)チームでの数値監視体制構築

まずはチームで数値を監視する体制の構築します。自分の場合はアカウントを1人で監視するということはせず、複数人で監視し運用していきます。パフォーマンスの責任は明確に私にあるのですが、チーム内でも役割分担を行い、オペレーション業務とクリエイティブ業務では全く別の人間が携わるような形で運用を行っています。まずはこの体制を構築する必要があります。

(2)動画広告の数値の動きを監視し運用していく

数値の動きは日々チーム内で共有されています。挙動に不穏な点があれば監視をしているメンバーが他のメンバーにも情報共有するなどし全員で状況を共有しています。特に日々の数値として広告費をどの程度投下しているか、コンバージョンはどうなっているのか、といった点は当然注意深く見ているのですが、以下の要素なども細かく見ています。

  • 視聴率
  • 配信面
  • 曜日時間帯別数値
  • デバイス別数値
  • コンバージョンが発生したユーザー属性

例えばBtoCサービス業の広告配信の場合、配信面によってパフォーマンスに大きな差が出るケースが多々あります。場合によっては早期段階でYouTube に配信を絞り込み、アプリやウェブサイトを除外するといったような判断をするケースもあります

上記指標は日々監視しつつ、週次、月次でも数値の変化に気を配ります。そうすることで短いスパンでは気づけない変化にも気がつけるようになります。

(3)チームで動画について徹底的に議論する

配信中の動画や動画広告案については徹底的に議論します。

例えば YouTube の公式情報によれば総再生時間の70%はモバイルユーザーであり、そのため「モバイルユーザーに向けた取り組み」を行うことが非常に重要であるという指摘をしています。

【参考】スクエア動画や縦長の動画を使ってモバイル ユーザーにアプローチする

その中には「オーソドックスな横長のサイズだけではなく、縦長のサイズ展開も検討すべき」も含まれています。これはオーガニックの投稿に限らず、広告面でも同じことが言えるのではないでしょうか。

例えば再春館製薬所のドモホルンリンクルは、横長の YouTube 広告を制作したのち、その動画と同じ内容の動画を縦長で用意し YouTube 広告上で配信しています。

撮影パターンやセリフの細部は異なりますが、動画の内容はほぼ同じものになります。このような形であれば撮影の手間暇を減らした上で、縦長・横長動画の反応を比較検証することができます。

また例えば広告だけではなく、オーガニック投稿で成功している動画事例を参考にし、既存広告を編集するだけで効果を上げられる可能性も考えられます。

例えば NewsPicks がアップしている動画の中には「全体の動画要約(重要な発言の抜き出し)25秒+本編」で構成されているものが存在します。以下はその参考例です。

【参考】「【落合陽一】家族とは何か?「家族のかたち」を考える

このような構成で動画が複数制作されていることから、似たユーザー層がターゲットの商材の動画広告を展開する場合、同じ構成で動画広告を作成し配信することで成果をあげられるかもしれません。

ある程度周知された形式(フォーマット)で動画を制作すれば、ユーザーは結果や要点が予想できるため負担やストレスなく動画を視聴できるようになります。このような取り組みを行うことで視聴率が上がるほか、クリック率、コンバージョン率にも良い影響が出るケースが期待できます。

このような仮説をチーム内の情報共有・雑談時の会話から次々に生み出し、実際に実行し検証していく作業を複数人で進めていきます。

(4)実際に見た良い動画広告の「良さ」をシェアする

日々 YouTube 広告をウォッチしているのですが、特に良い動画を見かけた際、自分は「なぜ良いと思ったのか」という点を他のメンバーにシェアします。図解すると以下のような形となります。

実際にやってみるとわかるのですが「動画広告の良さ」を語ろうとすると、特にピンポイントで「実際に自分の心が動いた瞬間」について語ることが多いのです。

「実際に自分の心が動いた瞬間」を頻繁に言語化すると「心が動いた瞬間」がどのように発生するのか、どのように動画を作れば「心が動いた瞬間」を作り出せるのかという点について、感覚的に理解することができるようになります。

自分は動画の編集経験は殆どありませんし、動画制作の実績のある会社や環境に身を置いているわけではありません。なのでまずは「良い動画広告はどのようにすれば作り出せるようになるのか」を考えこの形に行き着き現在もこれを実行しています。

実際に動画広告の絵コンテを書く際に、この取り組みは活きてきます。また具体的なアドバイスをする際にも(例:編集者に「ここは○○の YouTube 広告と同じような感じでトランジションを入れて」といった形で広告のデータを添えて話す際)この取り組みは成果をあげています。

(5)関係者間での責任と役割の明確化

社外とのやりとりという点でいえば、関係者間での責任と役割の明確化も必要です。広告主、撮影者・編集者、広告運用者間での責任、役割を事前に明確化しておくことで円滑なやりとりが可能になります。

逆にこの点が不明確だとお互いがお互いの役割や責任に口を出す結果となり、うまく機能しなくなります。非効率でもあるため、早めに手をうち明確化は行っておくべきでしょう。

これからYouTube広告をやる場合にすべきこと

これから動画広告を始める場合、まずやるべきことについて触れていきます。

(1)YouTube広告のアーカイブを自作する

YouTube 広告を録画したり、上記手法で動画広告の URL を特定しストックすることからはじめましょう。自分だけの、社内限定の YouTube 広告アーカイブを作成し、良い動画などは仲間内で共有するなどし動画広告に対する共通認識を深めていきます。

効率重視で広告を集めていく場合はアドクロールなどの広告収集ツールを使うのも1つの手でしょう。ただいずれにせよアーカイブは構築した方が良いです。

(2)公式の6記事を読み込む

公式の TrueView アクションに関する記事で優れた6つの記事を全読しましょう。これらを読み込むことで基本的な TrueView アクションに関する理解を深めていきます。

1.「動画キャンペーンの運用のヒント

まずこれが一番重要な公式記事になります。前述したモバイルユーザーへリーチすることの重要性、広告の改善方法、視聴率の分析、改善のヒント、広告視聴単価改善のヒントなどが書かれています。

ただし具体性に欠けるものも多く、そのため如何にこの記事を読み解き自分の案件に照らし合わせて「どのように運用していけばいいのか」を考えることが重要になります。

2.「TrueView アクションで成果を高める新たな手段」 

自動入札戦略の設定で悩む人は多いのではないでしょうか。コンバージョン数の最大化にすべきか、目標コンバージョン単価制にすべきかなど、そういった場合はこの記事を参考にするのも手かもしれません。

「週に50件のコンバージョンがない場合でも”コンバージョン数の最大化”で配信をすべき」など、入札戦略についてかなり具体的な言及がなされています。

TrueView アクションを初めて運用される場合や、短期集中型のキャンペーンをお考えの場合、入札戦略「コンバージョン数の最大化」は効果的な選択肢と言えます。また、キャンペーンのコンバージョン数が入札戦略「目標コンバージョン単価」の推奨ライン(50 件 / 週)に届かない場合にもおすすめです。

TrueView アクションで成果を高める新たな手段」より引用

3.「コンバージョンを促す動画広告に必要な「ABCD フレームワーク」で TrueView アクション広告を分析する

「そもそもどんな動画広告を作れば…」という方も多いのではないでしょうか。

Google は動画広告において、作るべき動画広告の構図として「ABCDフレーム」を用いたものを推奨しています。実際に ABCD フレームで制作された動画広告の事例をこの記事の中で見ることができます。

4.「効果的な動画広告を作成するためのヒント

再生率、動画の推奨時間について具体的な情報が提示されているため一読する必要がある記事になります。特に重要な点に関しては下記引用通りです。

短くて効果的な動画を心がけます。最も重要なメッセージは、ユーザーが途中で視聴をやめても伝わるよう、動画の早い段階に含めます。再生率は 45 秒を超えると急激に低下します。

効果的な動画広告を作成するためのヒント」より引用

5.「YouTube 視聴者へのリマーケティングについて

すでに YouTube チャンネルが存在している場合、動画広告を展開する前にアカウント連携は済ませてしまっても良いと思います。通常のリマーケティングリストとしてチャンネル動画視聴者やYouTubeチャンネル内で特定のリアクションをしたユーザーをリスト化できることについて解説された記事です。

以下はリスト化可能なユーザーの一覧です。

・チャンネルの動画を視聴
・特定の動画を視聴
・チャンネルの動画を(広告として)視聴
・特定の動画を(広告として)視聴
・チャンネル登録
・チャンネル ページにアクセス
・チャンネルの動画を高く評価
・チャンネルの動画を再生リストに追加
・チャンネルの動画を共有

YouTube 視聴者へのリマーケティングについて」より引用

6.「コンバージョン重視の TrueView アクション キャンペーンを最適化するおすすめの方法

この記事を読むことでどのような初期設定、調整、施策を展開していくべきかを体系的に理解することができます。ただし予算設定や自動入札戦略の切り替えなどはすべての案件で一概に言い切れるわけではないので、自分の案件と照らし合わせて常にその選択が最適なのかという点について考え、運用していく必要性があります。

(3)資格を取得してみる

資格を取得し、その過程でYouTube広告について勉強するのも非常に価値があります。今回は TrueView アクションについて理解できれば良いという人も多いかと思いますが、YouTube 広告全体を知った上で TrueView アクションに取り組むのと、TrueView アクションだけを知った上で配信やディレクションを行うのとでは大きな差があります。特に更なるプロフェッショナルな価値をクライアントに提供したい方は取得をオススメします。ちなみに自分は持っていませんが、部下が取得してくれていたで助かりました。

【参照】:Google 広告の動画広告認定資格

想定される7つの質問とそれに対する個人的見解

次によくされる質問とそれに対する個人的見解についても記載しておきます。特にこれから動画広告に注力していく人も多いかと思いますので、そういった方のお役に立てれば幸いです。

(1)動画広告に広告運用者はどう関わるべきか

これは鈴木さん@yusuzu06もウェビナーで仰っていたことですが「動画のディレクションをする」上で、実はランディングページディレクションの経験がいきてきます

例えばランディングページに掲載されている情報の内容は同じでも、言葉遣いによって伝えたい情報が伝わらない、見せ方で損をしているケースは多く、それらに対して自分はこれまで数多く改善提案を行いコンバージョン率を上昇させるなどしてきました。

動画に関しても同じで、動画は同じ内容でも画角を変えたり編集を加えてアレンジするだけでパフォーマンスが様変わりするケースがあります。特に「コンバージョン率が変わりそうな点」を具体的に指摘し、改善を促せるのはこれまでしっかりと改善提案を行ってきた広告運用者にしかできない仕事なのではないでしょうか。

(2)ツールを導入して動画広告を量産していくべきか

結論からお答えすると、ツールを使い動画を闇雲に量産する必要性はありません。いくら動画広告を量産したとしても要点を抑えていない動画を作ってもパフォーマンスは一向に量化しません。それよりも本記事「純新規ユーザーからコンバージョンが取れる YouTube 広告を作り込む上で抑えておくべきポイント」に書いた内容を抑えた動画広告を制作すべきです。

また作り込まれた動画広告であれば、配信開始から1年以上立ってもコンバージョンを生み出し続けるケースも決して珍しくありません。この点は検索連動型広告などと同じです。

(3)どのような切り口で広告を制作すべきか

本記事「純新規ユーザーからコンバージョンが取れる YouTube 広告を作り込む上で抑えておくべきポイント」に書いた内容を抑えた動画広告を制作すべきです。

(4)どんな機材を買うべきか

正直専門機材はそこまで不要かと考えています。自分は Facebook 広告は自分で絵コンテ・撮影・編集・広告運用まで一貫して管理しているケースがありますが、iPhone(iPhone 12 Pro Max)で撮影して iMovie や Adobe Premiere Rush だけで編集して広告配信しています。

(5)配信すべき施策は?

自分の場合はヘルプの内容を理解した上で色々と初動から取り組みましたが、結論からお話しするとカスタムオーディエンス(旧カスタムアフィニティ・カスタムインテント)とリマーケティング広告だけでまずは問題ありません。またこれは公式の推奨設定でもあります。

まずは、カスタム インテント オーディエンスとリマーケティング オーディエンスをターゲットとするキャンペーンを開始します。

コンバージョン重視の TrueView アクション キャンペーンを最適化するおすすめの方法」より引用

またカスタムオーディエンスの作り方については公式ヘルプに詳しく書かれています。すでに検索広告を展開している場合はコンバージョンが発生したキーワードを登録したり、他にも競合サイトの URL を追加するほか、アプリ、場所の登録など進めていきましょう。

カスタム インテント オーディエンスをターゲットとするキャンペーンでは、検索キャンペーンで最もコンバージョン数の多いキーワードを 300〜500 個使用します。

コンバージョン重視の TrueView アクション キャンペーンを最適化するおすすめの方法」より引用

(6)最初の絵コンテが描けない

絵コンテがかけないのは単純に商品理解、動画広告に対する理解が枯渇しているからです。自分の場合は過去に見た動画( TVCM 、ドラマ、映画、アニメーション)やストックしている YouTube 広告などを参考にしつつ、実際に商材に触れる、向き合う時間を増やし、その上で絵コンテを書きはじめます。そうすると絵コンテの前提となる原始的なイメージが存在するため、手が動かないということは無くなります。

(7)絵が下手で絵コンテが描けない

例えば「新世紀エヴァンゲリオン」で有名な庵野氏の絵コンテ(これはほぼビデオコンテですね)を見ましょう。大事なのは絵のクオリティではなく動きや抑えるべき要点を的確に見た人(他のスタッフ)に伝えることだということがよくわかります。

プロのアニメーターと同じようなものを作る意識は早々に捨てた方が良いでしょう。以下は「呪術廻戦」の平松さんが書かれたコンテです。ここまで作り込む必要はありません。でもこの程度のクオリティのものを作らなければいけないと思い込んでいる人は多いのではないでしょうか。

絵コンテのハードルが高い場合、漫画におけるネーム(絵コンテのベースとなるもの)から作り始めてみるのは如何でしょうか

ネームをベースに絵がうまい方に絵コンテを書いてもらう、ココナラで発注して仕事を外注するなどできれば非常に効率的です。以下は4コマ漫画で有名ないしかわじゅん氏のネームです。氏のような感じのネームであれば、上記した絵コンテのようなハードルの高さを感じずに済むのではないでしょうか。

既にベースとなる動画がある場合、動画のキャプチャを切り抜いて絵コンテとしてもいいでしょう。誤解なく伝えたい場合は遠慮なく文字(テキスト情報)を使って相手に意図を明確に伝えましょう。

はじめは四コマ漫画を書く要領で良いと思います。ギャグ系の四コマ漫画って絵のディティールよりも「面白いかどうか」の方が大事ですよね?それと同じで動画広告で伝えたい情報や熱意、意思が的確に撮影者・編集者に伝わればまずはそれで大丈夫です。

文責:川手遼一