X(旧Twitter)に配信されている Google 広告の背景と現状

当サイトは、Amazon.co.jp の商品を宣伝することにより、紹介料を獲得できる Amazon アソシエイト・プログラムの参加者です。

当記事に Amazon へのリンクが含まれている場合、それをクリックし買い物をすると、当サイト(および当サイト管理人)に対して一定の収益が発生します

発生した収益の一部は、持続的なサイト維持のために使用されます。

ちなみに下記リンクをクリックし Amazon内で何かしら買い物をしていただくと、当サイト内で紹介した商品以外の購入でも収益は発生します。

https://amzn.to/3REJQgU

もし「ブログの内容が役になった」「記事のおかげで助かった!」といった方は上記リンクをクリック頂き、Amazon内で買い物をしていただければ幸いです

悩ましいのは、協力頂いた皆さんには持続的なサイト維持以外何の見返りもないということです。せめて皆さんから頂いた額を見て、ブログ読者の方への感謝の気持ちを忘れぬよう日々努めます。

2024年5月ごろより、日本でも Google 広告からXにて(現在は主にネイティブアプリ面に)配信された広告を目にする機会が増えてきました。

自分自身、iPhoneユーザーなのですが、iOS の公式アプリでも、よくX に配信されたGoogle 広告を見かけます。

他の方も同じようで、そういった声を X でも見かけるようになってきました。

本日は、X(旧Twitter)に配信されている Google 広告の背景と現状について解説していきます。

X(旧Twitter)に配信されている Google 広告(消せない広告)同様に注目されている、2024年11月中旬、下旬以降特に散見されるようになった、従来であれば「成人向けの性的なコンテンツ」に該当し、審査を通過することがなかった広告が多くの人に配信されるようになってしまっている現象とそれらを表示しにくくする方法については、下記記事で別途詳しく解説しています。

X(旧Twitter)でアダルト広告を表示しにくくする方法
https://ppc-log.com/twitter-ads/15353/

1.背景について

そもそも、なぜGoogle 広告(主にGDNおよびP-MAX?)からX.comに広告配信がなされるようになったのかについて、まずは前提となる背景情報から整理していきます。

(1)資金面での枯渇対策

AdAge は昨年9月、「資金的な枯渇を補うために、XはGoogleに Programmatic Ads の販売を依頼する予定だ」と報じています。

Programmatic Ads とは一般的に、購入と売買が自動化された広告の総称を示すものであり、ここでは Google アド マネージャー を介した広告のことを示しているものと思われます。

X, formerly known as Twitter, will start receiving programmatic ads from Google as it continues to look for advertising supply sources to fill its coffers, which have been drained following Elon Musk’s acquisition of the company last year.

(訳)かつて Twitter として知られていた X は、昨年のイーロン・マスクによる買収後に枯渇した資金を補うために、広告供給源を探し続けており、その一環として Google からプログラマティック広告の提供を受け始める予定です。

X turns to Google for programmatic ads in timeline | Ad Age」より引用、著者訳

(2)実際に資金難(広告の売り上げは落ちている)なのか?

例えば、CNN は2023年2月に「X(当時Twitter)の上位1,000社の広告主の半数以上がプラットフォームへの支出を停止した」と報じました。

引用元:More than half of Twitter’s top 1,000 advertisers stopped spending on platform, data show

海外ではポルノコンテンツと広告が併記され表示されてしまう件、過去停止されたアカウントを復活させたことで広告収入を増やそうとしている件、暴言など複数の要因が重なり、広告主の離反が進んでいるという報道もあります。

仮に、こういったデータが事実であった場合、十分に「広告の売り上げは落ちている」と言える可能性は高いのではないでしょうか。

また直近の Bloomberg の報道によれば、23年の広告収入は買収直前の21年からはおよそ45%の落ち込みとなり、約25億ドル(約3950億円)になると報じられました。

資産家イーロン・マスク氏が所有するソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」の2023年の広告収入はこのままいけば約25億ドル(約3600億円)と、過去数年と比べ大幅な減少となりそうだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

Xの広告収入、大幅減少の見通し-マスク氏の個人的投稿が影響か – Bloomberg」より引用

2023年6月に CEO として就任した Linda Yaccarino 氏はもともと NBC ユニバーサルの広告担当責任者を務めていた経験もあり、就任直後から彼女が中心となり、「広告主を呼び戻すための施策に取り組んでいる」とFinancial Times(FT)が報じ、話題にもなりました。

参照:Linda Yaccarino’s vision for Twitter 2.0 emerges

そして昨年、日本でも発売された話題となった書籍『イーロン・マスク 下』でも、忙しいスケジュールの中調整し、個別の広告主をイーロン氏自ら訪問するシーンなどが描かれていました。

その日のうちにマスクはニューヨークに飛んだ。

広告営業チームと善後策を打ち合わせ、広告主やそのエージェントに安心してもらう働きかけをしなければならないからだ。

マスクはXを伴い、グリニッチビレッジにあるメイのアパートに午前3時ごろ到着した。

ホテルもきらいだし、ひとりになるのもきらいだからだ。

翌朝、メイもXも、ツイッターのマンハッタン本部に同行した。厳しい1日になることはまちがいなく、多少なりとも盾や心の支えになれればというわけだ。

イーロン・マスク 下』より引用

これらの動きから鑑みるに、X にとって広告は貴重な収益源であり、軽視できない存在である一方、その数値が大きく揺らいでいる可能性が高いことがご理解いただけるかと存じます。

(3)イーロン氏の発言

昨年米国ニューヨークタイムズでのイベントにて、自身の発言を反省しつつも広告を引き上げた広告主に対して暴言を発したことで話題になりました。

マスク氏は29日の米紙ニューヨーク・タイムズのイベントで自身の投稿への反省を口にしたものの、Xへの広告を引き上げた一部企業を「くたばれ」などと口汚い言葉でののしった。

Xから撤退の広告主増加も、マスク氏の罵倒で アナリスト予想 | ロイター」より引用

しかし、一方で広告主・広告代理店をはじめ、広告関係者の祭典と知られるカンヌライオンズでの発言では一変する発言をし、ふたたび話題を誘いました。

CNBC によれば「くたばれ(go f— yourself)」と発言した意味を広告主に問われ、氏は「それは広告主全体に対するものではなかった」と発言について釈明したと報じられています。

参照:Elon Musk softens ‘go f— yourself’ comment to woo advertisers

(4)仕様変更の影響も

特に直近1年は、日本国内でもX 広告(旧Twitter 広告)をめぐる混乱が数多く起こりました。

当ブログでもたびたび取り上げてきましたが、細かい不具合などを含めると列挙しきれないため、ここでは主要なものを3つだけ取り上げます。

いずれも、ほぼ予告なしでの実装でした。

  1. API の有償化
  2. フォロワー獲得広告廃止
  3. ブルーバッジのない広告主の広告停止

こういった仕様変更により売上が減少、それを埋めるために限定的に Programmatic Ads を導入、一定成果があったので拡大…といった形が考えられるでしょう。

(5)実はもっと前から取り組まれていた Google 広告から X への広告配信

昨年の9月に Ads.txt へ「google.com」の記載がなされました。こちらは現在でも、Wayback Machine を用いて確認可能です。

Twitter.comのAds.txt:https://twitter.com/ads.txt
X.comのAds.txt:https://x.com/ads.txt

また弊社の MCC アカウント内のデータを精査してみたのですが、多くの広告運用者が「5月頃から見るようになった」と発言する一方、少なくとも昨年12月には日本国内でも X.com に対して Google 広告から広告配信が日本国内においても開始されていることを確認しています。

その後テスト配信(一定の停止期間含む)の後、4月下旬より本格的に広告配信が再開され、5月、6月と表示回数、クリック数で見ても爆発的な増加が起きていることを把握しています。

そのため、一部のブログや情報発信を確認していると、「5月より配信されるようになった」などの記載が確認されますが、日本のデータに限定してみても、正確にはそれよりも以前から配信されていたものになります。

また、2023年9月以前より、「Google に広告を一任する」という案も、旧 Twitter 社内では浮上していたようです。

これについては、元 Twitter Japan株式会社代表取締役である笹本氏がまとめた新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』にて、触れられています。

現に一時は、Googleに営業をすべて任せる案も上がっていました。Twitterという会社はサービスを運営するだけの会社で、そこでの広告は全部Googleが販売するという案も上がっていた。

イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日 』より引用

(6)技術的な事情

旧 Twitter 広告の頃より、例えば ITP への対応や管理画面上の不具合などもあり、広告主や広告運用者から批判を受けることが多かった X 広告ですが、もしかするとそこに対する課題意識を持っており、「いっそのこと Google 広告経由であれば広告主が増えるのでは?」「それによりXのポテンシャルに気付く人も増えるのでは?」と考え、取り組んでいる可能性も考えられます。

実際、X広告から直接出稿するよりも、Google 広告を介した配信の方がターゲティング精度やコンバージョン計測精度は正確性が高まる可能性もあると言えるのではないでしょうか。

(7)離反した広告主を呼び戻すための施策という可能性も

離反した広告主を呼び戻すための施策、という可能性も考えられます。

Google 広告を介することで、X 面にさまざまな広告主の広告が表示されるようになります。

そうなることによっては、離反した広告主が「あそこもあそこも、Xに戻ってきている」となり、広告配信が再開される雰囲気を醸成させることが狙いかもしれません。

まとめると…

まとめると、以下のような形で取り組みが行われる可能性が考えられます。

  1. 単に広告収入が減少しておりそれの埋め合わせのため
  2. 限定的に取り組み成功したので追従
  3. Xのポテンシャルに気付いてもらうため

「1.単に広告収入が減少しているのでそれの埋め合わせのための取り組み」は第三者による調査結果およびマスク氏の言動から考えて十分ありえるものではないかと思われます。

また AdAge での発表にもあったように、昨年9月には Programmatic Ads に関する情報が確認できたため、また同時期にAds.txtに記載がなされたため、一部地域(おそらく日本を除く)ではすでに先行しテストが実施されていて、日本でも遅れて本格導入が進んでいる…という可能性も、考えられるのではないでしょうか。

また「(6)技術的な事情」にも書いた通り、技術的な背景から広告枠の提供を行っている可能性も考えられるのではないでしょうか。

2.X(旧Twitter)広告とX面に配信されたGoogle 広告の見極め方

まず Google 広告からX.comに配信された広告ですが、外見から「あ、これは Google 広告から配信されたものだ」とわかる、特徴があります。

例えば、以下は実際に X.com に Google 広告から配信された広告の表示例です。

こちらでご紹介する見極め方は、あくまで現段階で配信されている広告を確認し、外見的な特徴をまとめたものです。今後 X による仕様変更によって、 記事の内容と異なる広告がGoogle 広告から X 面に配信されるようになる可能性があります。

広告そのものは公開情報のためそのまま貼っても問題ないことが想定されますが、
ここではガウス処理したものを表示させていただきます(撮影:著者)

特徴は全部で、5つあります。

(1)テキストが不自然

広告の見出し、説明文が組み合わさって自動生成?されているためか、ポスト(広告)内のテキストパートが不自然に短いほか、違和感のある形で改行されていたり、場合によっては文章として不自然な日本語の羅列で構成されている場合があります。

(2)メディア部分の形が異なる

メディア(画像や動画など)の部分に関しても、通常のものと異なる場合があります。

例えばバナーサイズのものがそのまま用いられているものがあったりもします。

また通常のリンク付きポストの OGP であれば表示されるような、画像内のテキストパートが表示されなかったりするなどの現象が確認されています。

場合によっては「詳細」などと、右下に表示される場合があるようです。

(3)RP 、いいねボタンおよび数が非表示

自分が確認した範囲では、いいね、RP ボタンがそもそもなく、数も表示されませんでした。

おそらく、機能として欠損しているのでしょう。

(4)プロフィール横のIDが非表示の場合も

通常、ポストの左上にはアカウント名が表示され、@から続く形で ID も併記されます。

しかし、Google 広告から X.com に配信された広告に関しては、IDが表示されないケースも多く散見されました。

(5)その他

他にも、画像以外の部分(アイコンなど)をタップしたとしても別サイトに遷移するなどの特徴もあります。

他にもパラメータを直接見て確認する方法なども存在しますが、 Google 広告から配信されたものであるのかどうかについては(1)~(4)のものを確認するだけで推測可能なため、不要なクリックおよびタップは避ける方が望ましいでしょう。

つまり、下記特長のある広告は Google 広告からX.com面に配信された広告として判断し差し支えないでしょう。

  • テキストが不自然
  • メディア部分の形が異なる
  • RP 、いいねボタンおよび数が非表示
  • プロフィール横のIDが非表示
  • 画像以外の部分(アイコンなど)をタップしたとしても別サイトに遷移する

3.これらの広告を非表示にする方法

以下ポストのように、これらの広告に対して嫌悪感を持っている方は多いようです。

これらの広告を非表示したい場合、どのようにすればいいのでしょうか。

(1)これらの広告を非表示にする方法(iOS)

結論からお伝えすると、iOS(iPhone)であれば、以下方法で広告を非表示にすることが可能です(2024年8月現在)

上記設定を有効にすると、サイト閲覧や検索時の結果画面などに影響が出る可能性があります。サイト閲覧や情報収集に支障が出る場合は利用を控えるほか、設定を X 利用時のみに限定するなどご対応ください。

Webサイトの閲覧に問題が生じる場合、下記のように表示されるケースがあります。

===
Network Error
An error occurred while accessing

https://XXXXXX

The URL was blocked by a content filter
(Network Error #105)
===

これは今回設定したフィルターの影響によるものです。

具体的な方法としては、次のとおりです。

  1. アプリ「設定」を開く
  2. 「スクリーンタイム」内「コンテンツとプライバシーの制限」をタップ
  3. 「コンテンツとプライバシーの制限」を有効に変更
  4. 「ストア、Web、Siri、およびGame Centerコンテンツ」をタップ
  5. 「Webコンテンツ」をタップ
  6. 「成人向けWebサイトを制限」をタップ
  7. 「常に許可しない」の「Web サイトを追加」をタップ
  8. URLに「googleads.g.doubleclick.net」を追加し「完了」をタップ

Grok への学習が自動で有効になっている(デフォルトで有効、PCからのみ設定変更可能)場合、そちらが原因でバッテリーの異常消費が起きている可能性が考えられます。対処法については下記記事で詳しく言及しています。

参照:Xで見かける消せない広告やGrokが原因でスマホバッテリーが異常に消費しているかも(対処法も解説)

(2)これらの広告を非表示にする方法(Android)

以下手法で、非表示にすることが可能です。

  1. Androidのシステム設定でDNSに「AdGuard DNS」を設定
  2. スマホを再起動(広告配信サーバとの通信経路を遮断されるように…)

ただ次のようなリスクもあります。

この手法を使用して設定をすると、DNSスプーフィングなどの中間者攻撃を引き起こす危険性があるため注意が必要です。ただし、悪意のある IP アドレスを返したとしても、https通信の場合証明書エラーが発生するため、アラートが表示され気づくことは可能かと思われます。

Grok への学習が自動で有効になっている(デフォルトで有効、PCからのみ設定変更可能)場合、そちらが原因でバッテリーの異常消費が起きている可能性が考えられます。対処法については下記記事で詳しく言及しています。

参照:Xで見かける消せない広告やGrokが原因でスマホバッテリーが異常に消費しているかも(対処法も解説)

4.プレースメントとしてのX.comへの広告配信

次に、レポート上の取り扱いについても言及しておきたいと思います。

例えば、X.comに広告配信されたかどうかを確認する場合、Google 広告管理画面内の「広告が表示された場所」にて、以下2つの配信先を見ることで、ざっくりと露出の有無やボリューム感を把握することができます。

Mobile App: X (Google Play), by X Corp.

Mobile App: X (iTunes App Store), by TWITTER INTERNATIONAL UNLIMITED COMPANY

自分が確認する限り、まだ PC 面への広告配信は確認されていないため、少なくとも日本国内においては、ネイティブアプリ上でのみ 広告枠が存在していると考える形が良いのではないでしょうか。

また広告代理店にお勤めの方でアクセス権のある方は、最上位の MCC アカウントの「レポート エディタ」内の「プレースメント」をクリックし、期間指定して一括ダウンロードすることで横断したデータ確認が可能となります。

5.個人的に気になる点

個人的に気になっている点についても列挙しておきたいと思います。

(1)広告の成果

Google 広告からX.comに配信可能となったわけですが、実際の成果(特にコンバージョン獲得)に関しては、成果が出るケースと出ないケースに二分されるはずですので、注視する必要があるように思います。

前述した通り、これらの広告に対してネガティブな印象を持っている方も多くいらっしゃるようなので、そういった実際に広告を見る方の持つ印象などが今後も続くのかどうかといった点も、注視しておくべきではないかと考えています。

(2)広告オークション上の懸念

現時点では、どうやらそこまで高くないクリック単価でX.comへのGoogle 広告からの広告出稿は実現できているようですが、一方で X 広告を配信している場合、オークションプレッシャーが働きやすくなってしまうリスクがあるという点は留意しておくべきではないかと思われます。

(3)広告配信の精度

前述した通り、現在の X 広告には効果計測や画面操作に関して、様々な課題があり、広告運用上、苦戦を強いられているケースもあるかと存じます。

そういった問題を、もしかしたらGoogle 広告から出稿することで解消することができるかもしれません。

そういった可能性に、ちょっと期待したいですよね。

(4)広告主側で把握できずトラブルになるケースも

広告主はGoogle 広告に広告配信しているものの、それが X 面に露出しているとは考えず、色々と誤解が生じてしまう可能性があるのではないでしょうか。

例えば、アプリゲーム「俺の甲子園」などの事例はその最たる例ではないかと。

引用元:俺の甲子園 – 高校野球部の監督になろう!

文責:川手 遼一