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きっかけは『「会社四季報」業界地図 2025年版』を購入、「120 レジャー・テーマパーク」の「四季報記者のチェックポイント」を読んだことでした。
気になったのは「ゲストの高齢化が進むディズニー」というポイント、原文は下記の通り。
ゲストの高齢化が進むディズニー
『「会社四季報」業界地図 2025年版』より引用
若年層の利用が多かった年間パスポートを廃止したことで、18~39歳のゲストが減少した。相次ぐ値上げも高齢化に拍車をかけそうだ
メモついでにポストしたところ、想定以上にポストが拡散され、投稿から一晩が経過した現在、すでにその投稿へのいいね数は25,000を超えています。
これは引用 RP の形でさまざまな意見が寄せられた結果わかったことなのですが、どうやらゲストの高齢化要因は年パスや相次ぐ値上げだけではなさそうなことが見えてきたので、整理がてら情報を列挙しておきたいと思います。
目次
まず、公式発信の二次情報から見ていきたいと思います。
おもに以下2つが、今回の情報を深く見ていく上で参考になる公式の情報となるはずです。
株式会社オリエンタルランド FACT BOOK 2024
株式会社オリエンタルランド 統合報告書 2023 2023年3月期
まず四季報の中で使用されたグラフの元データですが、「株式会社オリエンタルランド FACT BOOK 2024」に記載されています。
グラフを見ると、もともと50%以上あった18-39歳のボリュームゾーンが直近数年で40%近くまで落ちていることが伺えます。
「株式会社オリエンタルランド 統合報告書 2023 2023年3月期」では次のように言及されています。
年間パスポートの休止などによるゲスト層の変化
「株式会社オリエンタルランド 統合報告書 2023 2023年3月期」より引用
この変化の中に「(ゲスト層の)年齢の変化」が含まれているかどうかについては言及されていませんが、株式会社オリエンタルランドも年パス休止による影響については、一定理解しているようです。
しかし、年パスを休止したのは2020年9月ですから、それによる影響でゲストの年齢層が変化するのであればもっと早くに影響が出ていそうです(22年時点でも18-39歳は50.9%)
年齢層の急激な変化について、どうやら年間パスポートの影響だけで語るのは無理がありそうです。
一方、今回引用 RP の形で色々と参考になるような情報提供が複数見られたため、そちらについてもご紹介します。
多くあったのが「そもそも日本が高齢化しているためではないか」という指摘です。
本記事で指摘するまでもなく、日本は少子高齢化が進んでいます。
総務省統計局の公開したデータによると、2023年10月時点での日本の人口のボリュームゾーンは「第一次ベビーブーム」と「第二次ベビーブーム」世代です。
いずれも40代後半以降のところとなるため、そのことから来場者の年齢層に影響を与えていてもおかしくはありません。
ただこの点については、インバウンド客が直近では増加傾向にあることもあり、日本の人口比率がどこまで影響を与えるかが不明確です。また子供を連れていくにしても、晩婚化の影響なども多少はあるでしょう。
ただ気になるのは、子供はそこまで増えず、40代以上の比率だけ増えているという点です。
そして、いくら少子高齢化が進んでいるとはいえ、直近1-2年で10%程度の影響が出るとは考えにくいです。
川手が「ああ、これは影響が大きいだろうな」と思った要因の1つが、「商用動画撮影に対する制限」です。
ディズニーは現在、園内で撮影した動画を YouTube にアップロードし、それによって金銭を得ることを禁止しています。
営利活動(当社が許可した場合を除きます。)
「【公式】テーマパーク利用約款 | 東京ディズニーリゾート」の「禁止行為 第7条」より引用
これは2022年からの動きですから、多少この影響はあるかもしれません。
また現在は子供も YouTube で情報を得る時代ですから、YouTuber がディズニーに関する動画をアップロードしないため子供が「…行きたい!!」とならず、代わりに他の商業施設などに足を運ぶケースが多いのかもしれません。
直近でも「子供が USJ に行きたいと言う」というポストが話題になりましたが、そういったところに影響があっても違和感はありません(むしろ自然な気がします)
近年、映画館で上映するような作品において、記録的なヒット作を出せていないことも遠因の1つかもしれません。
ディズニーランド内の体験が変質しているようです。
例えば、パークでかつて無料配布されていた紙のガイドマップやトゥデイ(TODAY)は現在配布されていないそうです。また入場などにおいてスマホアプリの必須化などが行われております。
また、入場するまでの流れが複雑化しており、色々慣れていないと難しい作業が必要となっていることも一因として考えることができるのではないでしょうか。
こういったものがワクワク感の高揚を抑えてしまっている可能性も高いのではないでしょうか。
冒頭でも簡単に触れた通り、もちろん相次ぐ値上げの影響は大きいと思います。
例えばディズニーランドの入場料は直近数年単位で見ても、次の通りに推移しています。
年度 | 入場料 |
---|---|
1984年 | ¥3,900 |
1994年 | ¥4,800 |
2004年 | ¥5,500 |
2014年 | ¥6,200 |
2024年 | ¥7,900– ¥10,900(2021年3月より変動価格性を導入) |
84年度はバブルのピーク期などで比較するのは困難かもしれませんが、所得が大きく変動していないにも関わらず、直近20年で入場料が2倍近くになっている点を考えると「高い」となり、足が遠のくケースが、特に家族連れの場合は増えていても不自然な点はありません。
ただこの点について、Casey’s Corner氏 @casey_corner 氏が、大変興味深い分析データを共有してくれています。
つまり、「(サンプル数が少ないから確定ではないけど)統計的には、値上げが40歳以上のゲスト層に対して統計的に有意な影響を与えているとは言えない」とのことでした。
また「絶対数で見た時にはむしろ前年比で増えている」と主張される方が X に一定数いらっしゃったので、データをまとめてみました。
年度 | 来場者総数 | 4-11歳(小人) | 12-17歳(中人) | 18-39歳 | 40歳+ |
---|---|---|---|---|---|
2018年 | 32,558,000 | 4,948,816 | 4,199,982 | 16,506,906 | 6,902,296 |
2019年 | 29,008,000 | 4,351,200 | 3,364,928 | 15,055,152 | 6,236,720 |
2020年 | 7,560,000 | 725,760 | 710,640 | 4,120,200 | 2,010,960 |
2021年 | 12,054,000 | 1,325,940 | 1,494,696 | 6,135,486 | 3,097,878 |
2022年 | 22,089,000 | 3,004,104 | 2,761,125 | 9,917,961 | 6,405,810 |
2023年 | 27,507,000 | 3,685,938 | 3,410,868 | 11,277,870 | 9,132,324 |
確かに前年比で来場者数の絶対数は増えています。
ただ、見るべきはコロナの影響がまだ色濃く残っていた2022年との比較ではなく、直近数年のデータと比較してみてどうなのか…という点ではないでしょうか。
来園者数で見ると、次の通りです。
- 4-11歳(小人)は2018年度で約495万人、2023年時点で約369万人に(- 約126万人)
- 18-39歳は2018年度で約1,650万人、2023年度時点で約1,128万人(-約522万人)
- 40歳以上は2018年度で約690万人から2023年度時点で約913万人(+ 約223万人)
コロナの影響があるため具体的に勘案することが難しい部分もある一方、少子高齢化だけでは片付けられない(変化があまりにも急すぎる)側面があるという点について、ご理解いただければ幸いです。
そしてその急激な変化に関しては、少子高齢化に加えて年パスの廃止や値上げ、商用動画撮影に対する制限や体験の変質による影響が考えられるのではないでしょうか。
文責:川手 遼一