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2020年10月に Google は「まだ初期段階だがこういうものがある」と Automated Performance Max Campaigns(のちの P-MAX )に関する情報を出ていましたが、2021年5月に「Google Marketing Livestream 2021」にて今後展開する予定である複数の広告プロダクトや新規機能について説明をし、その際に「パフォーマンス最大化キャンペーン(通称:P-MAX)」について説明し、以降特定の広告主を中心にベータ版の提供を重ねテスト的に広告配信を行ってきました。
【参考】Google Marketing Livestream 2021 で発表された最新情報
2021年11月3日にはそれらのデータを踏まえ P-MAX を世界中の全ての広告主が利用できるように提供を開始するとアナウンスし(日本国内では一部の商材を取り扱っている広告主を除き)現在全ての広告主が P-MAX キャンペーンを設定し配信できるようになりました。
本記事ではそもそもパフォーマンス最大化キャンペーンとはどのようなキャンペーンなのか、どのようにすれば設定することができるのか、設定し配信する上でどのような点について注意すべきかについて解説していきます。
目次
そもそもパフォーマンス最大化キャンペーンとはどのようなキャンペーンなのでしょうか。Google は公式ヘルプにて下記のように説明しています。
P-MAX キャンペーン は、Google の多彩なチャネル(YouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、Google マップ)を横断して広告の購入と最適化ができる、新しいキャンペーン タイプです。通常のキーワード ベースの検索キャンペーンとの併用に最適で、1 つのキャンペーンで Google が持つ広告チャネルと広告枠をすべて活用し、自動化によりコンバージョン数と獲得価値を高めることができます。
「Google のさまざまな広告チャネルをフル活用してコンバージョンを促進できる P-MAX キャンペーン」より
P-MAX キャンペーンでは、管理しやすいキャンペーンを 1 つ作成するだけで、Google ネットワーク全体で商品やサービスを宣伝できます。
「P-MAX キャンペーンを作成する」より引用、訳追記
最大の特徴はこの「1つのキャンペーンから全ての広告枠に広告配信可能なキャンペーン」という点にあります。
例えば YouTube 広告と検索キャンペーンはそれぞれ配信したい場合、これまではそれぞれ別々にキャンペーンを作成する必要がありました。
ところが、パフォーマンス最大化キャンペーンは1つのキャンペーンから様々な広告を配信することが可能であるため、キャンペーン作成の手間や、管理の煩わしさを削減することが出来ます。上記した通り P-MAX は設定することで下記図のようにさまざまな広告枠に対して1つのキャンペーンから広告配信をする事を可能とします。
Google は公式に、以下5つをメリットとして提示しています。
すべての Google のチャネルとネットワークで新たなオーディエンスを開拓
より高い目標を達成する
より透明性の高い情報を入手する
キャンペーン関連の情報入力で自動化を進める
キャンペーン管理を効率化し広告を簡単に最適化する
「P-MAX キャンペーンについて – Google 広告 ヘルプ 」より引用
訳すと以下の通りです。
- Google が有するチャネルとネットワークの至るところにいる新規顧客となりうる層へのアプローチが可能に
- よりパフォーマンスを向上させます
- より高い透明性あるインサイトを得る
- 1つのキャンペーンにデータが集まることにより、自動化が進みます
- シンプルなキャンペーン管理とより広告の最適化を簡単に
まず前述した通り、パフォーマンス最大化キャンペーンの最大の特徴は「1つのキャンペーンから全ての広告枠に広告配信可能なキャンペーンである」という点にあります。
前述した通り「管理しやすくなる」という単純な運用上の利便性向上以外にも、1つのキャンペーンを起点に広告が配信されるようになるため以下のような事がアカウントの中で働きやすくなるよう考えられます。
- 1つのキャンペーンにより多くのデータが集まるようになる
- キャンペーン管理がしやすくなる
- より多くのデータが1つのキャンペーンに貯まるため最適化されやすくなる
- これまでであればキャンペーンを分割してそれぞれ予算設定をしていたりすることにより機会損失していた部分がカバーできるようになったりする
- そもそもキャンペーンを作成しておらず、そのため広告が配信されていなかったような広告も配信されるようになることによって、広告運用者自身ですら見つけられていなかったようなコンバージョンを増やす余地を発見し自動的に予算が割り当てられ広告配信される
これらはP-MAX特有のメリットとして挙げられます。
現時点で自分自身が運用してきた所感も交え、デメリットについても述べておきたいと思います。
細分化していった上でのデータ分析が、現状では行いにくいです。
例えば P-MAX では、どの程度どのような広告、配信面などに予算が投下されたのかなど確認できません。
2022年1月には「どのような広告枠に広告が表示されたのか」について、一部することが確認できるようになリました。
参照:P-MAX キャンペーンのプレースメント レポートを確認または作成する
しかしこれは「表示回数」があくまでも配信先の一部に限り見られるようになっただけで、何にどの程度予算が投下されるようになったか、クリックやコンバージョンがどのような配信面で生じたのかについては前述した通り確認する方法がありません。
以下正しい配信先ごとの表示回数を確認する方法についてまとめたものになります。
下記方法で P-MAX のプレースメントごとの表示回数を確認することは可能です。
1.Google 広告アカウント内「レポート」の「レポート」にアクセス
2.「カスタム」内で「+」をクリックし「表」を選択
3.レポートの項目として「属性」から「パフォーマンス最大化キャンペーンのプレースメント」を選択
4.項目として「表示回数」を選択
上記の流れで表示回数のみ確認することが可能です。以下注意事項、補足説明についてまとめたものになります。
- 上記した方法以外にも「事前定義されたプレースメント レポート」を使用する方法もあります(詳しくはこちらでも解説されています)
- 「パフォーマンス最大化キャンペーンのプレースメント」の代わりに「パフォーマンス最大化キャンペーンのプレースメント タイプ」を選択すると「ウェブページ」と「モバイル アプリケーション」と「-」の数値が表示されるのでざっくり把握したい際などに便利です
- 「パフォーマンス最大化キャンペーンのプレースメント」ではなく「ターゲット設定」から「プレースメント」を選択するとサイトやアプリ情報などは確認できますが「表示回数」を確認することは出来ません
- 「パフォーマンス最大化キャンペーンのプレースメント」「「パフォーマンス最大化キャンペーンのプレースメント タイプ」」はP-MAXを配信していないGoogle 広告アカウントでは「属性」にそもそも存在しません
例えば「この配信面だけに広告を掲載したい」とか「この形の広告だけ露出させたい」といったような調整は出来ません。
これは既に(スマート)自動入札を利用しているキャンペーンなどと同様ですが、どのような形で予算が投下されるのかが事前に決められない分、「なぜそのような挙動に至ったのか」などが把握しにくく、上司やクライアントに説明を求められた際に説明がしにくい仕様になっています。
下記公式ヘルプにも書かれているように、P-MAX キャンペーン は通常の検索キャンペーンのキーワードと完全一致する検索語句に対しては広告が表示されない仕様になっており、P-MAX の広告のほうが広告ランクが高くなり、得られる価値の増加が期待できる場合、表示される仕様になっています。
P-MAX キャンペーンの広告は、通常の検索キャンペーンのキーワードと完全に一致する検索語句に対しては表示されず、P-MAX の広告のほうが広告ランクが高くなり、得られる価値の増加が期待できる場合に表示されます。
「Google のさまざまな広告チャネルをフル活用してコンバージョンを促進できる P-MAX キャンペーン」より引用、一部修正
P-MAX キャンペーンでは、ユーザーの検索語句が検索広告キーワード(スペル修正された検索語句を含む)と同一でない場合、広告ランクの最も高いキャンペーンまたは広告が選択されます。
「広告ランク – Google 広告 ヘルプ」より引用
この1つの仕様を考慮しても、広告ランクは管理画面上では確認できないリアルタイムでオークションベースで変動し続けている数値になりますので「運用者自身が通常の検索キャンペーンと P-MAX とでどのような広告の出しわけが行われているのかを把握することは困難」であり、細かな挙動を説明することは物理的に不可能です。
そういった不確定要素を内包しているのも、P-MAX の特徴になります。
設定方法について詳しくは下記別記事にまとめていますのでそちらをご参照ください。
最後に、パフォーマンス最大化キャンペーンを取り扱う上での注意点についても触れておきます。
例えば「リマーケティングリストのユーザーだけに広告配信したい」などといった形で広告配信できるものではありません。「オーディエンス シグナル」と呼ばれる項目でユーザーリストを設定すること自体は可能ですが、あくまでもこれは「広告配信する上でどのようなリストを参考に用いるか」といったものであり「ここで選択したリストのユーザーにしか広告配信しない」といったものではありません。
公式ヘルプ上でも下記のように注意事項として記載されていますので、そちらも併せてご確認ください。
掲載結果目標を達成するためのコンバージョンにつながる可能性が高い場合、P-MAX では、シグナルには該当しないものの関連性の高いオーディエンスにも広告が表示されることがあります。
「アセット グループを作成する」より引用
管理画面上では「パフォーマンスの最大化」と表示されますが、「レポート」からレポート出力して確認するとキャンペーン タイプは「最大の掲載結果」と表示されています。
ファインドキャンペーンもつい1年前まで「検索ネットワーク(ディスプレイ ネットワーク対応)」と表記されていたので、これもそのうち修正されるかもしれません。
ちなみに上記ツイートでは『MCCアカウントでP-MAXキャンペーンの挙動を複数アカウント横断し確認しようにもキャンペーン タイプの選択肢に「パフォーマンス最大化」がそもそも無かったり』と記載していますが、現在は「パフォーマンスの最大化(P-MAX)」を選択し、MCC内の複数アカウントにおける P-MAX キャンペーンを横断しながら確認することが可能です。
通常のキャンペーンはキャンペーンを最上位の概念として存在し、その中に広告グループ、広告と存在しています。パフォーマンス最大化キャンペーンの場合は広告グループの代わりに「アセット グループ」という別のものが存在しており、広告グループは存在しません。
2022年1月現在、Google Ads Editor上ではキャンペーンを認識することが出来ません。今後リリース予定の1.9以降で対応される可能性が高いです。
2022年3月現在、ver2.0にてP-MAXもGoogle Ads Editor上で認識されるようになりました。2,0以前のものでは引き続きP-MAXキャンペーンは認識されないため更新し利用する必要があります。
参照:Google 広告エディタ バージョン 2.0 – Google 広告エディター ヘルプ
特定のデバイスを指定し、広告配信の可否を選択することは出来ません。
「Google 広告」(アプリ)から、パフォーマンス最大化キャンペーンは最適化案を確認することができません。
上記した通り、最適化案の内容は現状実用的ではないものも多く含まれており現状参考にするには困難な状況です。
設定上「最終ページURLの展開」がデフォルトでオンになっています。
こちらがオンになっているとヘルプにも記載ある通り「成果を最大限に引き出すため、ユーザーの意向に応じて、最終ページ URL がより関連性の高いランディング ページや広告見出しに置き換えられる場合」があります。
下記の引用文の通り Google はオンを推奨していますが、広告配信のリンク先を指定されている場合などオフにしておくことをオススメします。
最終ページ URL の展開機能(デフォルトではオン)を活用しましょう
「Google の多彩な広告枠をフル活用できる P-MAX で目標を達成する」より引用
「最終ページURLの展開」については、キャンペーン作成公開後もキャンペーン設定から変更が可能です。
設定を推奨されているすべての広告構成要素(広告見出し、説明文、画像、動画など)を入力したとしても「より多くの場所に広告が適切に表示されるよう、15文字以内の広告見出しを1つ以上追加してください。」などと注意書きが表示されます。設定可能な5つの広告見出しをすべて設定していたとしても表示されます。
元々除外キーワード登録が管理画面上では不可でしたが、アカウント単位で除外キーワード登録が可能な仕様に変更されたため(すべての対象キャンペーンに適用する除外キーワードを最大 1,000 個設定可能)除外可能となりました。
「設定」内「アカウント設定」の「除外キーワード」より変更可能です。
またこちらから除外した場合は、除外登録後アカウント全体から除外されてしまうため、ご注意ください。
除外キーワード設定をしていないと、例えば「指名キーワードを除外する」や「紳士協定を結んでいる競合他社明名での広告配信を行わない」といった事が起こるため、この点は注意が必要です。
例えば「ASPより商標リスティングを禁止されている(指名キーワードでの広告配信を禁止されている)」ケースなど、気が付かないうちにトラブルのもとになる配信をしてしまうケースもあるかと思われます。
またサポートの方に問い合わせさえすれば、除外キーワードリストの紐づけも対応してもらえるため(委任に関するやり取りが必要)お困りの際は Google のご担当者さんに相談されることをオススメします。
動画を設定しない場合、アセットとして設定している画像、テキスト情報をもとに動画が自動生成され配信されます。クライアントによるクリエイティブ確認が必須の場合など、要注意です。
詳しくは下記ヘルプにも記載あります。ヘルプ上は「動画が生成される可能性があります」と記載されていますが、自分が確認した限りではほぼ100%、動画を設定していないと動画が自動生成されて配信されてしまうようです。
P-MAX のアセット グループに動画を追加しない場合、アセット グループ内のアセットを使用して 1 つ以上の動画が生成される可能性があります。自動生成された動画を P-MAX キャンペーンで配信する必要がなくなった場合は、独自のカスタム動画をアップロードすると、動画の自動生成を停止できます。
「アセット グループを作成する」より引用
この点については海外の広告運用者も「必ずしも理想的な動画ではない動画が自動生成される」と指摘し、注意を促しています。
2023年1月現在、P-MAX を経由すると wbraid が付与されるケースも多く、オフラインコンバージョンへのインポートを行いたい場合は特に注意が必要です。
参照:Google 広告で付与され始めたパラメータ「wbraid」について
参照:WBRAIDはまだオフラインCVに対応していないのかどうか教えてほしい – Google 広告 コミュニティ
P-MAX 自体は既に原則ベータ版扱いではないものの「来店数のみ(ローカル)を目標に設定しているキャンペーン」に関しては、 2022 年までベータ版扱いになります。以下は公式ヘルプからの引用になります。
→現在はベータ版ではなくなりました。
来店数のみ(ローカル)を目標に設定しているキャンペーンは、2022 年までベータ版で運用されます。
「P-MAX キャンペーンについて」より引用
1つの Google 広告アカウントに作成できる P-MAX キャンペーンの上限数は100件までです。以下は公式ヘルプからの引用になります。
Google 広告アカウントでは、最大 100 件の P-MAX キャンペーンを作成できます。可能な場合には、成果を最大限に引き出すために、P-MAX キャンペーンを統合することをおすすめします。
「P-MAX キャンペーンについて」より引用
前述した通り、パフォーマンス最大化キャンペーンについて自分は今後長期的に見て Google 広告アカウントに対して大きく変化をもたらす可能性が最も高い広告プロダクトであると考えています。
ただ「デメリット」や「注意したい14つのこと」でも述べた通り、現状欠点もあり、旧来の Google 広告と比較し扱いにくい部分もあるプロダクトとなります。
特に急いで設定する必要もないものかとも思われますので過度な期待はせず、例えば管理画面に反映されたら低予算で設定して配信してみるとか、既存のキャンペーンと並行して走らせてみてまずは様子を見るだとか、今のところそういった取り扱いが望ましいように自分自身見ています。
またスマートショッピングキャンペーン、ローカルキャンペーンは2022年4月以降P-MAXへのアップグレードが予定されています。すでにスマートショッピングキャンペーン、ローカルキャンペーンを取り扱っている場合は注意が必要です。
以下は直近でのアップデートスケジュールについて一覧表にまとめたものになります。スマートショッピングキャンペーン、ローカルキャンペーンを運用中の場合、以下のような変更が入ることも事前に理解しておくべきです。
時期 | 予定 |
---|---|
2022年4月 | 上記ツールを用いてスマートショッピングキャンペーンがアップグレード可能に →2022年6月(未確定)に延期されることが告知される 参照:P-MAX の新機能を活用して新規顧客を獲得する – Google 広告 ヘルプ →完了 |
2022年7月〜9月 | →完了 |
2022年8月〜9月 | →完了 |
2022年9月末 | 9月末までに一連のアップデートが完了(予定) →一部未完了、「2023 年前半までに自動アップグレードが完了する予定」である旨が告知 参照:スマート ショッピング キャンペーンとローカル キャンペーンを P-MAX にアップグレードする |
参照:パフォーマンス最大化キャンペーンを全ての広告主が利用可能に
文責:川手 遼一