X(旧Twitter)広告でフォロワー獲得広告の提供が終了

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X(旧Twitter)は8月11日(日本時間で8月12日)にフォロワー獲得広告用のキャンペーンの作成や配信に関して終了(順次配信終了)したことを発表し、話題となりました。

本記事では詳細とその背景についての仮説について言及していきます。

1.フォロワー獲得広告とは

フォロワー獲得広告とは、特定のアカウントが興味を持ちそうな X アカウントの利用者に自らのフォローをおすすめする広告を表示するもので、タイムライン、[おすすめユーザー] セクション、検索結果など X の様々な面に対して配信されていました。

参照:フォロワー獲得広告とは何ですか?

特定のアカウントをフォロワー数を伸ばすことができるため、たとえばフォロワー数を伸ばしたいXアカウントなどによって使用されるほか、フォロワー獲得した際に一定の単価が発生する広告でもあったため、費用対効果よく運用できることから人気の広告メニューでもありました。

今回 X は8月11日(日本時間8月12日)にフォロワー獲得広告用のキャンペーンの作成、および配信を急遽終了することを発表しました。

現在すでに管理画面上でのキャンペーン作成ができない仕様となっており、配信も停止しています。

ただし下記 X のポストにもあるようにキャンペーン作成に関しては、7月26日時点でできなくなっていたという情報も確認されています。

2.フォロワー獲得広告の終了

今回 X は8月11日(日本時間8月12日)にフォロワー獲得広告用のキャンペーンの作成、および配信を急遽終了することを発表し話題となりました。

日本ではお盆休みとかぶっていたこともあり、完全に寝耳に水であった広告運用者の方も多かったのではないでしょうか。

X において、下記のような動揺する声も広がっており、今年の4月末に急遽行われた一部アカウントの停止騒動を彷彿とさせるような展開になっています。

参照:Twitter広告の配信が日本でも4月22日から一部アカウントは不可に(配信中のものも停止)

3.なぜフォロワー獲得広告が終了するのか(5つの仮説)

理由としては以下5つが考えられます。

(1)フォロワー数そのものの重要性が低下しているため

依然としてXにおけるフォロワー数は、特定のアカウントを確認する際によく見られる重要な数値指標の1つです。

しかしTikTokのように、多くのSNSは現在 AI によるレコメンデーションの方が優先度が高まり、「フォローされていること」よりも「投稿した内容が人間とAIから受け入れられるかどうか(エンゲージメントが取れるか)」の方が重要性を増しています

Xは直近で縦動画の全画面再生機能の追加やレコメンデーション、「おすすめ」の登場などを行なっていることからも分かる通り(以前から「ホーム」という名称でも時系列表示以外のタイムラインは存在)、他SNSに追従する形でフォローフォロワーの投稿を流すよりも、レコメンデーションされた投稿を見るための場となっていくことが進んでいくことを構想していると思われます

そういった構想に対して、フォロワー獲得広告は今後不要となる可能性が高いと判断され切り捨てられた可能性が考えられます。

(2)Xにとって収益性が低かった可能性が高いため

またシンプルにフォロワー獲得広告は、Xにとって収益性が低い広告メニューであった可能性が考えられます。

例えば直近でXは広告収益の一部をユーザーとシェアするシステムを導入しましたが、これによって裏側では広告収益性の低いメニューの見直しが行われており、そこでフォロワー獲得広告が候補に上がった可能性が考えられます

参照:Creator Ads Revenue Sharing | X Help

広告枠の数に上限がある以上、より収益性の高い広告を掲載することで、Xの収益は最大化されます。

その一方、フォロワー獲得広告はフォロワーが増えなければ収益が発生しない仕組みとなっており、フォローが発生しなければいくら広告が表示されたりクリックが発生したりしても収益が発生しないため、他の広告に比べて収益性が低いことが予想されます。

そのためメニューそのものの廃止が検討され、実施された可能性があります。

(3)シンプルにユーザーにとってのXでの体験が損なわれるため

フォロワー獲得広告はXでの体験が著しく損なわれる可能性があることから廃止された可能性があります。

「体験が損なわれる」とは、具体的にどのようなものが考えられるのでしょうか。ここでは3つ例をあげて考えていきたいと思います。

①形状が異なる

フォロワー獲得広告では、メディアを設定しない場合、通常のポストや他の広告とは異なる形状で「フォローする」というCTAボタンのみが表示されます。このような独特の形状のポストが多くなると、ユーザーの体験が一貫しなくなる可能性があります。

このように、他のポストと形状が異なっていたり、タップ後の挙動が異なる広告は他の SNS にも存在しています。

たとえば Meta 広告でも同様に形状が異なる広告としてリード獲得広告と呼ばれる広告があります。こちらはフィード面に表示された際は他の広告と同じような見た目をしていますが、タップ後にはランディングページに遷移せず、Meta 内のリードフォームへと遷移する仕組みになっています。

こういった形状の広告は通常の広告に比べて CPM が高くなるよう設定されており、ユーザーが一貫した体験を損なう分、広告収益が発生する形にして一定のバランスを保つよう工夫がなされています

ところが「(2)シンプルにXにとって収益性が低かった可能性がある」にも記載した通り、フォロワー獲得広告は収益性が低かった可能性がある上、X のプラットフォーム上ではユーザーにとって負荷がかかるという二重で好ましい広告ではなかった可能性が考えられます。

②フォロー解除されても広告費がかかる

「(2)シンプルにXにとって収益性が低かった可能性がある」では X にとって収益性が低かった可能性があることについて言及した一方、逆にフォローさえされれば広告費が発生してしまうため、例えば誤タップによってフォローされてから数日後にフォローが解除されても広告費がかかってしまう仕組みとなっていました。

このようなことが続けば広告効果に対して利用者が懐疑的になり、長期的に考えた際の X 広告のブランドイメージが損なわれる可能性が考えられます。

広告主も1人の X ユーザーであることを念頭に考えると、その際に広告を通じて生じるユーザー体験としてあまり良い体験ではないことが想定されます。

そのため廃止された可能性が考えられます。

③情報商材アカウントでの利用

フォロワー数が多いことが一定の権威性として利用できるため、フォロワー獲得広告は情報商材系のアカウントで利用されることがしばしばあり、そういった広告ポストが目立ちXのブランドイメージが損なわれることを恐れ、廃止された可能性があります。

(4)それでもフォロワー数は重要な指標の1つであるため

前述した通り「依然としてXにおけるフォロワー数は、特定のアカウントを確認する際によく見られる重要な数値指標の1つ」です。

「(1)フォロワー数そのものの重要性低下」と矛盾するように感じる方もいるかもしれませんが、仮に広告を使う、使わないに問わず「実はお金を使ってフォロワー数を増やすことができる」ということがプラットフォーム上で公然と囁かれていることは、その特定のプラットフォームにおけるフォロワー数がもたらす権威性を著しく傷つける可能性があります。

フォロワー獲得広告は以前から存在していたもののため、今更そこにメスが入ることは考えにくいのですが、1つの可能性としては考えられるため列挙しておきます。

(5)多様化している広告メニューを減らすため

フォロワー獲得広告は以前から存在している広告メニューの1つですが、その後も広告メニューは増え続けており、メニューの増加に伴い管理画面上での設定は煩雑化し続けています。

X はフォロワー獲得広告の代替メニューなどの用意は予定しておらず、現時点でそれに関する発表もないため今回を機にフォロワー獲得広告は廃止されるものと考えられます。

ただ同様にフォロワーになる可能性のあるユーザーに広告上でアプローチする手段として、例えばエンゲージメント数キャンペーンなどが挙げられます。

既存の他キャンペーンにおいて互換性があるため、単純に統廃合された可能性が考えられます。

4.対処方法

今のところ X から代替するような広告メニューなどは発表されておらず、以前と同様のような広告効果を得たい場合はエンゲージメント数キャンペーンなど他の広告メニューを使い配信するような形になりそうです。

ただフォロワー獲得広告とはそもそも広告費の発生ロジックが異なるため、以前のような効率での広告配信は難しいものと思われます。

5.最後に

直近で X(旧Twitter)はサービス名の変更やロゴの変更を行うなど大きな変更を行う一方、現在の収益の大半を占める広告にも積極的な取り組みを見せており、前述した通り、4月には突如一部アカウントは広告配信ができない状態にするなどといった動きを見せています。

参照:Twitter広告の配信が日本でも4月22日から一部アカウントは不可に(配信中のものも停止)

その騒動の際にも自分は下記のようなネガティブコメントを寄せていますが、今後さらにそのような流れが加速していく可能性がある一方で、逆に一部の広告主が去ることによってチャンスが生じる余地も生じうることも考えられるため、絶えず X の動きは静観した方が良いのではないかと考えています。

こういった大規模な変更が特にアナウンスから実装までが短期間で今後も行われると、広告媒体として Twitter に対する依存度を下げていこう…といったような広告主の動きも想定されます。

Twitter広告の配信が日本でも4月22日から一部アカウントは不可に(配信中のものも停止)」より引用

文責:川手遼一