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以前に公開した記事「広告運用のスペシャリスト1年目に取り組んだ13のこと」で紹介した『スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ』の読後感が想像以上によく、タイトルから類似書であると判断、惹かれて購入し数か月前に読了しました。
目次
本書の概要についてですが、以下の通りです。
キャリアアップを目指すシニアソフトウェアエンジニアには、2つの異なる道があります。一つは、管理職への道。マネジメントスキルを磨き、チームや組織を導く道です。この道については、多くの研究がなされ、スキルを向上させるための書籍も数多く存在します。
もう一つは、技術専門職の道。エンジニアリングのスキルを極め、専門性を深めていく道です。近年、技術専門職のキャリアパスを用意する企業は増えてきているものの、まだ明確な指針が確立されているとは言えません。
本書は、技術専門職としてのキャリア成長に必要な考え方やスキルを詳細に解説します。上級技術専門職に求められる役割、大局的な視点を持って自らの仕事に取り組む方法、大規模プロジェクトを成功に導く手法、自身の専門性を深めながらチームメンバーの成長を支援する方法を学びます。
技術専門職としてのキャリアを目指すエンジニア必携の一冊です。
引用元:スタッフエンジニアの道 – O’Reilly Japan
そもそも広告運用者のスペシャリスト領域に関する情報は社会全体で見ても不足しており、他の領域(ここではエンジニア、プログラマー領域)におけるスペシャリストのキャリアプランや仕事の進め方を見て参考にしつつ、「広告運用に置き換えると…」といった形で読み進めました。
通読する中で、特に魅力的に感じた点は、第7章「今はあなたがロールモデル(お気の毒さまながら)」や第8章「良い影響力を広げる」でしょうか。
理由は以下、3つです。
これは本書を通じて、特に第7章、第8章では顕著に感じたのですが、本当に重要なことが回りくどくない形で、適切に表現されています。
例えば、 SNS って便利です。
広告運用に関してで言えば、ベストプラクティスや最新情報やノウハウなど、魅力的な関する情報が溢れているようにも見えてしまいますよね。
でも。自社やクライアントに良い影響を与える「真に魅力ある情報」はごく一部です。
本書では、それらについて次のように述べられています。
技術業界は主観的なアドバイスで溢れています。これから示すリストも例に漏れません。ベストプラクティスは常に状況に依存します。
エッジケースや特殊な状況もあるでしょう。私のアドバイスがあなた自身の判断と矛盾する場合は、あなた自身を頼してください。
スタッフエンジニアには、従来の知恵が間違っているときにそれを見抜く良識が必要です。
『スタッフエンジニアの道―優れた技術専門職になるためのガイド』より引用
本書に一貫していることですが、安い自己啓発書や啓蒙コンテンツの類と異なり、安易に「SNS で情報収集しましょう」などといった話はほぼ登場しません。
一見すると読みにくく、正論ではあるものの実践ハードルはやや高い、しかしそういったことがきちんと書かれていることも本書の魅力の1つです。
「スペシャリストが備えているべき素養」について網羅的に書かれているが故、自分は何を満たしており、何を満たしていないかが通読するだけで理解できます。
特に直近で受けた1on1やクライアントからのフィードバックを参考に読むと良いのではないでしょうか。
ちなみに、自分はこのあたりは読んでいて「…あ、自分にはまだ足りていないところだな」と反省しました。
自分のコンテキストを理解する
自己認識の大部分は、自分には特定の視点があること、そのコンテキストが必ずしも普遍的ではないこと、自分の意見や知識が自分に特有のものであると理解することにあります。他の領域のチームと話したり、非エンジニアに技術的なトピックを説明したりする際には、エコーチェンバーから抜け出す必要があります。
『スタッフエンジニアの道―優れた技術専門職になるためのガイド』より引用
委譲
委譲とは、自分の仕事の一部を他の人に任せることを言います。委譲するとき、あなたは通常、誰かにプロジェクトを渡して立ち去るわけではありません。
あなたはその結果に投資します。結果に投資するとなると、マイクロマネジメントをしたくなったり、プロジェクトの難しい部分をすべて自分でやりたくなったりするかもしれません。しかし…
『スタッフエンジニアの道―優れた技術専門職になるためのガイド』より引用
ただ注意すべきは「スペシャリストを目指す以上、本書の内容をすべてを兼ね備えていなければいけないのか?」ということです。
結論、否です。
スペシャリスト故、状況により求められる技能や判断力の性質は大きく異なることも多いはずです。
そのため、すべてを網羅的に習得すれば良いかというと、そうではなく(もちろん、そんな人がいればとても活躍が期待できそうですが)逆に1つや2つ欠けていると劣っているというわけではありません。
その点について、留意しておく必要があります。
通読する中で、自分が直近で身につけなければいけないことや、忘れてしまっていた初心が1つ2つ見つけられれば、それに越したことはない…ぐらいに心得ておくと良いでしょう。
例えば、自分はたびたび一次情報の重要性や、実際にエンドユーザーと話をしたりする機会を設けるようにしています。
またなるべく、技術的なトラブルや事象に遭遇した際も、自力で解決する方法がないかを模索し、思考するようにして手を動かすようにしており、「これは公益性があるな」といったトラブルについては解決後、当ブログなどでシェアするようにしています。
こういった行動について、よく外部の方から「よくそんなことやりますね」と言われることもあります。
こういった自分自身が正しいかどうかはわからないけど取り組んでいる、日々の習慣のようなものについても肯定してくれる内容が書かれており、読んでいて、とても気分が楽になりました。
Googleのスタッフエンジニアである Stephanie Van Dykは、自分の仕事に必要な基能的スキルと、年の超味である織物で使うスキルの間の類似点をこう指摘しています。
「技術的なスキルは学習と練習から生まれます」。
彼女はこうも言っています。
「それらは生まれつきのものではありません。熟練した織り手やコンピューター技術者として生まれた人は誰一人いないのです」
経験は、時間、機会、学習を通じて得られます。生まれながらの適性ではありません。
技術スキルを開発するには努力が必要です。書籍からも多くを学べますが、自分自身で問題を解決し、それらを解決するための自分なりの技術を学び、何がうまくいき何がうまくいかないかを確認することに勝るものはありません。
『スタッフエンジニアの道―優れた技術専門職になるためのガイド』より引用
シニアエンジニアであるとは、成長する心構えと向上心を持つことを意味します。
技術リーダーが10年以上も前に否定された「ベストプラクティス」や、もう誰も使っていないような技術に固執するのは、誰にとっても恥ずべきことです。
業界のあなたの分野で起きていることに関心を持ち続けましょう。たとえコードにもう深く関わっていなくても、コードの「匂い」や起こりそうな問題に対するあなたのスパイダーセンスは鋭く保つべきです。最新で最もホットなツールや実践を知らなくても、それを調べる方法は知っておきましょう。
『スタッフエンジニアの道―優れた技術専門職になるためのガイド』より引用
著者自身の経験や具体事例をベースに学べるほか、定性的、感情的なメッセージも添えられており、全体的にバランスが良いです。
どうかソフトウェアに真剣に取り組んでください。
『スタッフエンジニアの道―優れた技術専門職になるためのガイド』より引用
ソフトウェアを作るのは楽しいものです。創造性や多少の気まぐれを発揮する余地もありますし、大抵は仕事をするのにスーツを着る必要もありません。しかし、ソフトウェアは人々の生活に大きな影響を与えます。
ただ『スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ』でも指摘があるように、スペシャリストのキャリアはスペシャリストゆえ、規則性や法則性が、ジェネラリストのキャリアロードマップに比べて少ないという点について留意すべきです。
テクニカルリーダーシップのキャリアパス(職歴の道筋)には不明瞭な点が多く、スタッフプラスは何をするのか、という一見シンプルな問いにさえ、答えるのが難しい。
『スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ』より引用
あくまでも「これからジェネラリストは厳しいのでスペシャリストを目指す、その上で参考にしよう」というよりも、スペシャリストにならざるを得ない人が「何を今自分は学ぶべきか」と悩んだ際に、手に取ることで意味のある良書のうちの1つであると、認識しておくと良いでしょう。
文責:川手 遼一